2-1)日本国憲法が国民に保障する自由及び権利のすべては、日本国内に居住する外国人にも保障される。 ×
※「外国人にも保障される」
→外国人には保障されない。
※日本国憲法が保障する人権は「その権利の性質上、日本国民を対象としているものを除き」外国人にも保障されるのであって、すべてが保障されるわけではない。
2-2)わが国に在留する外国人には、わが国の政治的意思決定に影響を及ぼすような政治活動の自由についてまで保障されているわけではない。
※外国人には、わが国の政治的意思決定に影響を及ぼすような政治的活動の自由は保障されていない。
※外国人の政治的活動の自由は「わが国の政治的意思決定またはその実施に影響を及ぼす活動等外国人の地位にかんがみこれを認めることが相当でないと解されるものを除き」保障される。マクリーン事件。わが国の政治的意思決定にかかわる政治的活動の自由は、除外されていることに注意。
2-3)外国人は、在留の権利ないし引き続き在留することを要求しえる権利を憲法上保障されている。 ×
※「保障されている」→保障なし。
※判例では、外国人には在留の権利、入国・再入国の自由は全く保障されていない
4-4)外国人は、憲法上日本に入国する自由を保障されてはいないが、憲法22条1項は、居住、移転の自由の一部として海外渡航の自由も保障していると解されるため、日本に在留する外国人は一時的に海外旅行のため出国し再入国する自由も認められる。 ×
※「認められる」→認められない
※外国人には、再入国の自由も保障されていないとするのが判例(森川キャサリーン事件)である。
4-5)普通地方公共団体は、条例等で定めるところによりその職員に在留外国人を採用することを認められているが、この際に、その処遇について合理的な理由に基づいて日本国民と異なる取扱をすることは許される。
※東京都管理職昇任試験事件の判例と同旨。
※なお外国人には公務員に就任する権利(公務就任権)は保障されないとするのが判例である。
4-6)憲法の定める国民の権利及び義務の各条項は、自然人たる国民のみに適用されるものであり、法人たる会社は、政治的行為をなす自由を有しない。 ×
※「適用されるものであり」→適用されるのみならず、
※「自由を有しない」→自由を有する。
※法人にもその権利の性質上可能な限り人権が保障される。そして法人たる会社にも政治的行為をなす自由は保障されるというのが判例である。八幡製鉄事件。
4-7)税理士会が政治資金規正法上の政治団体に対して全員の寄付をすることによって、たとえ税理士に係る法令の制定改廃に関する要求を実現するためであっても、原則として、税理士会の目的の範囲外の行為であり、無効と言わざるを得ない。
※税理士会には政治献金の自由は認められずその行為は無効。
※営利法人である会社には政治献金の自由が保障されているが(八幡製鉄事件)、税理士会という公的な性質を持つ強制加入団体には、政治献金の自由が保障されておらず、法人の目的外の行為として、その行為は無効と判断される。
※南九州税理士会政治献金事件。法人の法的性質よって結論が分かれている点に注意。
4-8)地方公務員の政治的活動を制限する法律は、民主的政治過程を支える政治的表現の自由の侵害であるから違憲である。 ×
※「違憲とはいえない」
※公務員の政治的中立性を損なうおそれのある公務員の政治的行為を一律に禁止することも憲法21条に違反しないとするのが判例である。猿払事件。
6-9)国家公務員法102条1項よび人事院規則による公務員に対する政治的行為の禁止が、憲法上許容されるか否かを判断するにあたっては、禁止の目的、その目的と禁止される政治的行為との合理的関連性、政治的行為を禁止することにより得られる利益と禁止することにより失われる利益との均衡の3点から検討することが必要である。
※猿払事件の判例と同旨。
※この猿払事件における合憲性判定基準のことを「合理的関連性の基準」と呼ぶ。
6-10)一定の制約の下に、未決拘留で監獄に拘禁されている者に対して新聞等の閲覧の自由を制限することは認められる。
※未決拘留者などの在監者に対して新聞等の閲覧を制限することも許される。
※制限が許されるためには閲覧を許すことにより監獄内の規律及び秩序の維持上放置することができない程度の障害が生ずる相当の蓋然性の存在が必要とされている。よど号ハイジャック新聞記事抹消事件。
6-11)刑務所に未決拘留により拘禁されている者であっても、幸福を追求する権利を有しており、喫煙を禁止することはできない。 ×
※「できない」→できる。
※未決拘留者も基本的人権の享有主体であるから、憲法13条の保障する幸福追求権を有するが、喫煙を禁止することは可能である。喫煙処分事件。
6-12)喫煙の自由は、基本的人権に含まれるとしてもあらゆる時、所において保障されなければならないものではない。
※禁煙処分事件の判例と同旨。
※なお喫煙の自由は基本的人権に含まれると断言したわけではない。
8-13)日本国憲法の基本的人権の規定は、もっぱら国又は公共団体と個人との関係を規律するものであり、私人相互の関係を直接に規律することを予定していない。
※憲法の人権規定は、私人間に直接適用されないとするのが判例・通説である。
※憲法の人権規定が私人間でどのような効力をもつかという私人間効力の問題については、私法の一般条項(民法90条等)に憲法の人権規定の趣旨を織り込んで解釈するという間接適用説が採られている。
8-14)企業が特定の思想・信条を有するものについて、それを理由として雇い入れを拒んだとしても、当然違法とはいえない。
※企業にも雇用の自由があるので違法ではない。
※企業の雇用の自由(憲法22条)と就業しようとする者の思想・良心の自由(憲法19条)の衝突する場面だが、企業がその者の思想・信条を理由に雇いいれを拒んでも当然に違法とはいえないとするのが判例である。三菱樹脂事件。
8-15)就業規則に女子の定年年齢を男子よりも低く定めた規定がある場合、その規定は、性別のみによる差別として法の下の平等を定めた憲法14条1項に違反して違憲無効である。 ×
※「憲法14条1項に違反して無効である」→民法90条の規定により無効。
※私人間効力について間接適用説を採ることが判例であるから、結論の部分に「違憲無効」とはならない(憲法の規定は出てこないことに注意)。
※就業規則で定年年齢に男女差を設けたことが争われた当該事件では、((問題13))の三菱樹脂事件とは異なり、従業員の主張が認められ無効と判断されている。
10-1)警察官が正当な理由もないのに、個人の容ぼうを撮影することは、憲法13条に違反するが、公共の福祉のために必要な場合には許される場合がある。
※京都府学連事件の判例と同旨。
※個人の容ぼう等をみだりに撮影されない権利(肖像権)は、憲法13条の幸福追求権の1つである。
10-2)何人も、その承諾なしに、みだりにその容ぼう・姿態を撮影されない自由を有するが、警察官による撮影は、証拠保全の必要性があれば、その撮影方法を問わず許容される。 ×
※「その撮影方法を問わず」→その撮影が相当な方法をもって行われる場合には許容される。
※警察官により無断撮影が許されるのは、、
1)現に犯罪が行われ、もしくは行われた後に間がないと認められ
2)しかも証拠保全の必要性・緊急性があり
3)撮影方法が相当な方法で行われた場合、、、である。
(京都学府連事件)。
10-3)私生活をみだりに公開されない権利が法的に救済されるための要件のひとつとして、公開された内容が一般の人々にいまだ知られていない事柄であることが必要とされる。
※プライバシーの要件として、東京地裁が挙げているのは
1)私生活の事実まあは事実らしく受け取られる恐れのあること。
2)公開された内容が一般の人々にいまだ知られていない事柄であること。
3)一般人の感受性を基準にして当該私人の立場に立った場合、公開を欲しないであろうと認められる事柄
、、の3つ。宴の後事件。
12-4)地方公共団体が、弁護士会からの弁護士法の規定による前科照会に応じ、前科等のすべてを報告することは、前科等をみだりに公開されないという個人の法律上の利益を害し、違法となることがある。
※前科照会事件の判例と同旨。
※前科をみだりに公開されない権利は、憲法13条の幸福追求権の1つとして保障されると考えられている。
12-5)市町村長が漫然と弁護士会の照会に応じて、前科等を報告することは、それが重罪でない場合には、憲法13条に違反し、違法な公権力の行使にあたる。 ×
※「それが重罪でない場合には・・・」→犯罪の軽重を問わず。
※前科照会事件の判決では、「犯罪の種類、軽重を問わず、前科等のすべてを報告することは・・・違法となることがある」としている。
12-6)名誉を違法に侵害されたものは、人格権としての名誉権に基づき、将来生ずべき侵害を防止するために、侵害行為の差し止めを求めることができる。
※ノンフィクション「逆転」事件の判例と同旨。
※憲法上保障された名誉権に対する侵害として、不法行為が成立するので、侵害行為の差し止めを求めることが可能。
ノンフィクション「逆転」事件。
12-7)ある者の前科等を実名で公表した著作者は、それを公表する理由よりも公表されない法益のほうが勝る場合、その者の精神的苦痛を賠償しなくてはならない。
※ノンフィクション「逆転」事件の判例と同旨。
※他人の前科等を公表した者の表現の自由の価値(公表する理由)と、プライバシー権(公表されない法益)を比較して判断される。
12-8)何人も、憲法13条に基づき、みだりに指紋押印を強要されない自由を有するが、外国人登録法が定めていた在留外国人についての指紋押印制度は、許容されうる。
※外国人指紋押印拒否事件の判例と同旨。
※みだりに指紋押印を強制されない自由は憲法13条により保障されるが、公共の福祉による制限を受けるので、外国人に対する指紋押印制度自体は合憲であるとしている。
14-9)選挙人資格における差別の禁止だけでなく、投票価値の平等も憲法上の要請である。
※衆議院議員定数不均衡訴訟の判例と同旨。
※選挙権の平等は選挙権の内容の平等=投票価値の平等までも要求しているものとされているので、投票価値の平等も憲法上の要請である。
14-10)法改正に時間がかかるという国会側の事情は、憲法判断に際して考慮されるべきでない。 ×
※「すべきでない」→すべきである。
※判例では合理的期間内における是正がなされない場合に憲法違反と判断されるとしているので(衆議院議員定数不均衡訴訟)、法改正に時間がかかるという国会側の事情は、憲法判断に際して考慮されることになる。
14-11)参議院議員の選挙については、人口比例主義も一定程度譲歩・後退させられる。
※参議院議員定数不均衡訴訟の判例と同旨。
※参議院には、地域代表的性質があるので、人口比例主義だけで判断することはできない。
16-1)裁判所が他人の名誉を毀損したものに対し謝罪広告を新聞紙上に掲載するよう命じることは、意思表明の公表を強制するもので、憲法第19条に違反する。 ×
※「違反する」→違反しない。
※判例は「単に自体の真相を告白し陳謝の意を表明するに止まる程度の・・・謝罪広告を新聞紙に掲載すべきことを命ずる」判決は、良心の自由(憲法19条)を侵害するものではないとしている。謝罪広告事件。
16-2)労働者の採否決定に当たり、企業者が労働者の思想及び信条を調査し、そのためにこの者からこれに関連する事項について申告を求めることは、思想及び良心の自由に反し、違憲である。 ×
※「違憲である」→違法とはいえない。
※判例は、企業にも雇用の自由があり、思想・信条を理由に雇用を拒否しても違法とはいえない以上、採否の決定に当たり、思想信条を調査し、本人からこれに関連する事項について申告を求めても違法とは言えないとしている(三菱樹脂事件)。なお判例は、あくまで私人間効力における間接適用説に立って判断しているので、直接に憲法違反という判断をされていないことに注意。従って正しい解答の部分も「違憲」ではなく「違法」の語を使用している。
16-3)憲法の政教分離規定は、国家が宗教との関わり合いを持つことを全く許さない趣旨ではない。
※津地鎮祭事件の判例と同旨。
※政教分離の規定は、国家と宗教との関わり合いが、相当とされる限度を超えるものを禁止するものとされている。
16-4)市の主催により、市体育館の起工式を新道式地鎮祭として行うことは、その目的が社会の一般的慣習に従った儀礼を行うという専ら世俗的なものであっても、憲法20条第3項により禁止されている宗教的活動にあたる。 ×
※「あたる」→あたらない。
※判例は、目的効果基準により、政教分離規定により禁止さてた宗教的活動であるかを判断しているので、もっぱら世俗的なものである場合には、憲法第2条第3項により禁止されている宗教的活動には当たらないと判断される。津地鎮祭事件。
18-5)地方公共団体が靖国神社に玉串料等を奉納する行為は、両者のかかわり合いが相当とされる限度を超えており、違憲な公金支出である。
※愛媛玉串料訴訟の判例と同旨。
※政教分離違反が争われた裁判で、唯一政教分離に違反すると判断された事件である。
18-6)地方公共団体がデモ行為を禁止する条例を定めるのは、集会・結社の自由の侵害であるから、違憲である ×
※「違憲である」→違憲ではない。
※条例によって集会・結社の自由を制限することも許されている。
(新潟県公安条例事件)。
18-7)報道機関の事実の報道の自由は、憲法21条の保障のもとにあり、報道のための取材の自由も憲法21条により保障されてるので、何ら制約を受けない。 ×
※「何ら制約を受けない」→何ら制約を受けないものではない。
※思想良心の自由のような内心にとどまる人権でない限り、公共の福祉による制約は受ける。また((問題10))にもあるように、判例では「取材の自由も憲法21条の精神に照らし、十分尊重に値する」としているが、憲法21条により保障されると断言していない。博多駅テレビフィルム提出命令事件。
18-8)報道機関の報道は、国民が国政に関与するための重要な判断の資料を提供し、国民の知る権利に奉仕するものであるので、取材の自由が公正な裁判の実現のために何ら制約を受けることはない。 ×
※「何ら制約を受けることはない」→制約を受けることがある。
※取材の自由も公正な裁判の実現のためには制約を受ける。
博多駅テレビフィルム提出命令事件。
20-9)取材の自由の重要性に鑑み、報道機関が取材目的で公務員に秘密漏洩をそそのかしても違法とは言えず、賄賂等の手段を用意手も違法性が阻却される。 ×
※「違法性が阻却される」→違法性阻却されない。
※判例(外務省秘密漏洩事件)は、報道機関の取材行為が、不相応な手段・方法で行われた場合は違法となり得るとしているので、賄賂等の手段を用いた場合には違法性は阻却されない。なお、「違法性が阻却される」とは違法性が無くなるという意味である。
20-10)みだりに他人の家屋やその他の工作物にはり札をすることを禁止した軽犯罪法上の規制は、公共の福祉のために、表現の自由に対し許された必要かつ合理的な制限である。
※軽犯罪法事件の判例と同旨。
※みだりに他人の家屋等にはり札をすることを禁止することは、必要かつ合理的な制限として許されている。
20-11)一般人の筆記行為の自由について、それが、さまざまな意見、知識、情報に接し、これを摂取することを補助するものとしてなされる限り、憲法21条の規定の精神に照らして十分尊重に値するが、表現の自由そのものとは異なるため、その制限や禁止に対し、表現の自由の場合と同等の厳格な基準は要求されない。
※法廷メモ採取事件の判例と同旨。
※判例は、筆記行為の自由が憲法21条により直接保障されているとは言っていない。
20-12)傍聴人が法廷においてメモを取ることは権利として保障されているものではないが、特段の事情のない限り、これを傍聴人の自由に任せるべきである
※法廷メモ採取事件の判例と同旨。
※傍聴人が法廷においてメモを取ることを権利として保障しているわけではない。
22-13)検閲は公共の福祉を理由として認められる場合がある。 ×
※「場合がある」→場合はない。
※憲法21条2項による「検閲の禁止」は、例外のない、絶対的なものである。(税関検閲事件)
22-14)税関検査は、事前に発表そのものを禁止するものではないが、国民が思想・情報を受領する前に思想内容等を審査するものであるから、知る権利を害し許されない。 ×
※「許されない」→許される。
※税関検査は憲法違反ではないとするのが判例。税関検閲事件。
22-15)検閲は、公権力が主体となって、思想内容等の表現物を対象として、発表前にその内容を審査し、不適当と認めるときは、その発表を禁止することであるから、裁判所が表現物の事前差し止めの仮処分を行うことは、検閲に当たる。 ×
※「公権力が主体となって・・・検閲に当たる」→行政権が主体となって・・・検閲に当たらない。
※判例の採る「検閲」の定義とは、
(1)主体:行政権
(2)目的:発表の禁止
(3)時期:発表前、、、である。
そのため裁判所が行う事前差し止めは「検閲」ではない。
22-16)裁判所の仮処分による出版物の事前差し止めは、日本国憲法で禁じられている検閲に当たるので許されない。 ×
※「検閲に当たるので・・・」→検閲に当たらない。
※裁判所は司法権であるため検閲ではない。裁判所による事前差し止めが許されるには、、
(1)表現内容が真実でなく、又はそれが専ら公益を図る目的のものでないことが明白なこと。(2)被害者が入内にして回復困難な損害を被るおそれがあることが必要。
北方ジャーナル事件。
24-17)裁判所が、仮処分の形で、名誉毀損的表現を含む書物の出版を前もって差し止めるのは、当事者に十分な意見陳述の機会が与えられている必要がある。
※判例(北方ジャーナル事件)は、差し止めを命ずる前に、口頭弁論または審問を行い、表現内容等の真実性等の主張立証の機会を与えることを原則とすべきとしている。
24-18)高校の政治経済の教科書を執筆し、その出版を企てるものに対して、国があらかじめその内容を審査し、記述の変更を求めるものは違憲である。 ×
※違憲ではない。
※教科書検定は合憲と判断されてる。第1次家永教科書事件。
24-19)学問の自由には教授の自由も含まれるものであり、普通教育においても、大学における教授の自由と同じように、完全な教授の自由が認められている。 ×
※「完全な教授の自由が認められている」→完全な自由は認められていない。
※判例(旭川学力テスト事件)は、「普通教育の教師にも・・・一定の範囲における教授の自由は保障されている。しかし・・・完全な教授の自由を認めることはできない」としている。
24-20)大学においては、憲法23条の学問の自由を保障するために、伝統的に大学の自治が認められているから、大学における学生の集会は、それが実社会の政治的社会活動にあたる場合であっても、大学の有する学問の自由と自治を享有する。 ×
※「享有する」→享有しない。
※判例(東大ポポロ事件)は「大学における学生の集会が真に学問的な研究又はその結果の発表のためにするものではなく、実社会の政治的社会活動に当たる行為をする場合には、大学の有する学問の自由と自治を享有しない」としている。
26-21)新しく小売市場を開設しようとするものに対して、既存の小売市場との距離が接近していることを理由に、県知事がこれを不許可とするのは違憲である。 ×
※「違憲である」→合憲である。
※判例(小売市場事件)は、小売市場の距離規制を積極目的による政策的制約と認定して、著しく不合理であることが明白ではないので合憲とした。
26-22)薬局開設の許可基準として、薬局間の距離に制限を設けることは、公共の利益のために必要かつ合理的な制限とは言えず、違憲である。
※薬局距離制限事件の判例と同旨。
※薬局距離事件は、距離制限規定が争われた事件の中で唯一の違憲判決である。
26-23)私有財産を公共のために収用し、又は制限する場合には、すべて補償を要する。 ×
※「要する」→要するわけではない。
※特定の個人に特別な犠牲を課した場合には、憲法29条3項に基づき補償を要すると考えるのが通説である(特別犠牲説)。
26-24)災害を未然に防止するために、条例で補償なしに財産権の行使を制限しても憲法に違反しない。
※奈良県ため池条例事件の判例と同旨。
※災害防止を理由として行われる場合のように財産権に内在する制約の場合、保証は不要とされている。条例で財産権を制限することも可能であることに注意。
26-25)直接憲法第29条第3項を根拠にして、補償請求をする余地はない。 ×
※「余地はない」→余地がないわけではない。
※財産権を制限する法令に補償規定がなくても、直接憲法第29条第3項を根拠にして補償請求することも可能であるから、補償規定のない法令が違憲無効となるわけではないとするのが判例である。河川付近制限令事件。
28-26)私有財産を公共のために要いる場合の正当な補償とは、自由な市場取引において成立すると考えられる価格と一致することを要する。 ×
※「要する」→要しない。
※憲法29条3項の「正当な補償」とは、「その当時の経済状態において成立することを考えられる価格に基づき、合理的に算出された相当な額」とするのが判例(農地改革事件)であるので、市場価格と一致するとは限らない。
28-27)第3者の所有物を没収する場合において、その没収に関して当該所有者に対して、何ら告知・弁解・防御の機会を与えることなく、その所有物を奪ってはならない。
※第3者所有物没収事件の判例と同旨。
※憲法31条の法定手続き(適正手続き)の保障の内容として「告知と聴聞を受ける権利」の保障がある。
28-28)何人も、権限を有する司法官憲が発し、かつ理由となっている犯罪を明示する令状によらなければ、いかなる場合も逮捕されない。 ×
※「いかなる場合も」→現行犯として逮捕される場合を除いて。
※憲法33条の条文である。現行犯逮捕の場合は、令状は不要。
28-29)何人も、その住居、書類及び所持品について進入、捜索及び押収を受けることはない権利は、いかなる場合においても、正当な理由に基づいて発せられ、かつ、捜索する場所及び押収するものを明示する令状がなければ、侵されない。 ×
※「いかなる場合においても」→第33条の場合を除いて。
※憲法33条の場合とは、逮捕の場合のことを指しているので、現行犯逮捕・令状逮捕のどちらの場合も捜索・押収の令状なしで、その行為が可能である。憲法35条1項。
30-30)すべての刑事事件においては、被告人は公平な裁判所の迅速な公開裁判を受ける権利を有する。
※憲法37条1項
※「公平、迅速、公開」がキーワード。
30-31)刑事事件の被告人が、自分で弁護人を依頼することができないときは、国でこれを付する。
※憲法37条3項。
※国選弁護の制度について定めた規定
※被疑者には保障されていない
30-32)何人も、実行のときに適法であった行為については、刑事上の責任を問われない。
※憲法39条3項。
※遡及処罰の禁止を規定した条文。
32-1)国会議員の立法行為は、憲法の文言に明白に違反しているにもかかわらず立法行為を行うというような例外的な場合を除き、国家賠償法上は違反の評価を受けない。
※在宅投票事件の判例と同旨。
※国会議員の立法行為が国家賠償法上違反と判断されるのは、非常に例外的な場合だけである。
32-2)何人も、抑留又は拘禁された後、無罪の裁判を受けたときは、法律の定めるところにより、国に賠償を求めることができる。 ×
※「賠償」→補償。
※賠償も補償も金銭を支払うことでは共通であるが、「賠償」が違法な行為が前提であるのに対し、「補償」は適法な行為によって損失が生じてしまった場合に行われるものである。
32-3)選挙人は、その選択に関し公的にも私的にも責任を問われない。
※憲法15条4項。
※なお「私的にも」とあるところから、この規定は私人間効力について間接的適用説に立つ判例、通説の立場においても、直接適用される条文とされている。
32-4)日本国憲法25条は、直接個々の国民に対して具体的請求権を付与しているものである。 ×
※「付与しているもの」→付与しているものではない。
※憲法25条1項は国の責務を宣言したものであり、「直接個々の国民に対して具体的請求権を賦与したものではない」とするのが判例(朝日訴訟)である。なお判例は上記の文章に続けて「具体的権利としては、憲法の規定の趣旨を実現するため制定された生活保護法によって、はじめて与えられている」と述べている。
34-5)日本国憲法で保障されている健康で文化的な最低限度の生活の水準の具体的な内容は、文化の発達、国民経済の進展に伴って向上するのはもとより、多数の不確定要素を総合考量してはじめて決定できる。
※朝日訴訟の判例と同旨。
※本肢に続けて判例(朝日訴訟)は、「何が健康で文化的な最低限度の生活であるかの認定判断は、厚生(労働)大臣の合目的的な裁量に委ねられている」と述べており、広範な行政裁量を認めている。
34-6)生存権を具体化するためにどのような立法措置を講ずるかの選択決定は、立法府の広い裁量にゆだねられており、それが著しく合理性を欠き、明らかに裁量の逸脱、濫用と見ざるを得ないような場合を除き、裁判所が審査判断するに適しない。
※堀木訴訟の判例と同旨。
※国会の広い裁量を認定した判例。「明らかに裁量の逸脱・濫用と見ざるを得ないような場合を除き、裁判所が審査判断するのに適しない」というフレーズを覚える。
34-7)社会保障上の施策において在留外国人をどのように処遇するかについては、国はその政治的判断によって決定することができ、限られた財源の下で福祉的給付を行うに当たって、自国民を在留外国人より優先的に扱うことも許される。
※塩見訴訟の判例に同旨。
※なお外国人には生存権は保障されないとするのが判例である。
34-8)教育を受ける権利とは、教育を受ける機会の均等を内容とするので、能力によって差別することは許されない。 ×
※「許されない」→許される。
※憲法26条1項では「能力に応じて」と規定されているので、その者の能力によって区別することは禁止されていない。
36-9)国は、国民の付託に基づき公教育を実施する権限を有するものであり、教育の内容についても、自由に決定する機能を有する。 ×
※「自由に」→できるだけ抑制的であることが要請されている。
※判例(旭川学力テスト事件)は、「国は必要かつ相当と認められる範囲において、教育内容について決定する機能を有する」としているが、一方で、「教育に政治的影響が強く入り込む危険があることを考えるときは、教育内容に対する国家的介入についてはできるだけ抑制的であることが要請される」とも述べている。
36-10)勤労者の団結する権利及び団体交渉その他団体行動をする権利は、これを保障する。
※憲法28条
※労働基本権(団結、団体交渉、団体行動)を保障した規定。
38-1)天皇は、日本国の統合であり日本国民統合の象徴であってこの地位は、主権の存ずる日本国民の総意に基づく。
※憲法1条。
※憲法1条は、天皇が象徴であることと国民主権であることの双方について規定している条文である。
38-2)皇位は、世襲のものであって、皇室典範の定めるところにより、これを継承する。
※憲法2条。
※憲法で規定されているのは、皇位の世襲のみであり、天皇は男系の男子がなるとされているのは皇室典範の規定による。よって、女性の天皇は、憲法を改正しなくても可能である。
38-3)天皇は、日本国憲法の定める国事に関する行為のみを行い、国政に関する権能を有しない。
※憲法4条1項
※天皇は、憲法6条、7条に列挙されている国事行為以外行うことはできない。
38-4)天皇は国事に関する行為については内閣の助言と承認を必要とし、国会が、その責任を負う。 ×
※「国会」→内閣
※助言と承認を行う内閣が責任を負う。
38-5)天皇は、国会の指名に基づいて、内閣総理大臣を任命する。
※憲法6条1項。
※内閣総理大臣の指名は、国会が行い、任命は天皇が行う。
40-6)最高裁判所の裁判官は、内閣の指名に基づいて天皇が任命し、下級裁判所の裁判官は、最高裁判所の指名した者の名簿に基づいて内閣が任命する。 ×
※「最高裁判所の裁判官」→最高裁判所の長たる裁判官。
※最高裁判所の長たる裁判官は、「内閣の指名に基づいて天皇が任命する」が、その他の裁判官は「内閣が任命し、天皇が認証する」(憲法6条2項、79条1項)。
※長たる裁判官か、その他の裁判官かによって異なり、最高裁判所の裁判官をまとめて記述しているものは間違いになるので注意。
40-7)憲法改正及び法律の公布は天皇の国事に関する行為であるが、政令及び省令の公布は、天皇の国事に関する行為ではない。 ×
※「政令及び省令の公布は、天皇の国事に関する行為ではない」→政令の公布は、天皇の国事行為である。
※省令の公布は天皇の国事行為ではないが、政令の公布は天皇の国事行為である。(憲法7条1項)。
※省令→各省大臣がその主任の事務につき発する命令
40-8)天皇は、内閣の助言と承認により、国事に関する行為として、衆議院を解散する。
※憲法7条3号。
※衆議院の解散は、天皇の国事行為である。なお衆議院の解散についての実質的決定権は内閣にあると考えるのが通説である。
42-1)衆議院と参議院との関係においては、法律案の議決、予算の議決、条約締結の承認及び内閣総理大臣の指名についていずれも衆議院の優越が認められている。
※議決の要件で衆議院の優越が認められる4つの事項。
※法律案の議決、予算の議決、条約締結の承認、内閣総理大臣の指名の3つ。
※その他に、内閣不信任案の議決権、予算の先議権、、、についても衆議院の優越がある。
42-2)衆議院で可決された法案について、参議院が異なる議決をした場合は、必ず両議院の協議会が開かれる。 ×
※「必ず」→衆議院の判断により
※両議院の協議会は、法律案の議決の場合、衆議院の任意で開かれるが(憲法59条3項)、予算、条約の承認、内閣総理大臣の指名の場合は、必ず開かれるので注意。
42-3)衆議院で可決された後、参議院で否決された法律案は、衆議院で出席議員の過半数で再び可決したときは、法律となる。 ×
※「過半数」→2/3以上の多数
※法律案の衆議院の再議決の要件は、「出席議員の2/3以上の賛成」に加重されている。憲法59条2項。
44-4)参議院が衆議院の可決した法律案を受け取った後、国会休会中の期間を除いて60日以内に、議決しないときは、先に行った衆議院の議決が国会の議決となる。 ×
※「衆議院の議決が国会の議決となる」→衆議院は参議院がその議決を否決したものと見なすことができる。
※法律案の場合は、再議決が予定されており、最初の衆議院の議決がそのまま国会の議決となることはない。憲法59条4項。
44-5)内閣総理大臣の指名は、衆議院が先に議決しなければならず、その後に行われる参議院の議決と異なった場合は両議院の協議会を開き、それでも意見が一致しないとき、衆議院の議決を国会の議決とする。 ×
※「衆議院が先に議決しなければならず」→削除。
※予算とは異なり、内閣総理大臣の指名に関して、衆議院の先議権の定めはない。
44-6)衆議院の先議権が憲法上認められているのは予算のみである。
※衆議院の先議権は、予算についてのみ定められている。
44-7)内閣総理大臣の指名について両議院が異なった議決をした場合に両議院の協議会を開いても意見が一致しないときは、衆議院の議決を国会の議決とする。
※憲法67条2項。
※予算、条約承認も同様。
44-8)衆議院及び参議院の議員は、原則として、国会の会期中逮捕されないことになっているが、この特権は現行犯罪の場合やその院の許諾がある場合は除外されている。
※国会議員は原則として国会の会期中は逮捕されない。
※国会議員の不逮捕権(憲法50条)。
※この規定の例外として現行犯逮捕の場合と議院の所る議院の許諾がある場合は例外で逮捕される(国会法33条)。
46-9) 両議院の議員は、法律の定める場合を除いては、国会の会期中逮捕されず、会期前に逮捕された議員は、会期中これを釈放されなければならない。 ×
「釈放しなければならない」→その議院の要求があれば釈放しなければならない。
※会期前に逮捕された議員を釈放しなければならないのは、その議院の「要求があった場合」(憲法50条)である。
46-10)両議院の議員は、議院で行った演説・討論又は表決について、院外で責任を問われない。
憲法51条。
※国会議員の免責特権の規定。あくまで「院外」での責任(民事、刑事責任)が免責されるのであって、「院内」での責任は免責されないので、懲罰の対象にはなりうる。
46-11)内閣は、いずれかの議員の総議員の1/4以上の要求があれば、必ず臨時会の召集を決定しなければならないが、独自の判断で臨時会の召集を決定することはできない。 ×
※「できない」→できる。
※内閣は独自の判断で臨時会を招集することも可能である。(憲法53条前段)。
46-12)衆議院が解散された場合は、解散の日から40日以内に、衆議院議員の総選挙を行い、その選挙の日から30日以内に、国会を召集しなければならない。また、衆議院議員総選挙の後に初めて国会の召集があったときは、内閣は総辞職しなければならない。
憲法54条1項、70条。
※つまり内閣が衆議院の解散をした場合でも、衆議院総選挙後の最初の国会(特別会)の召集時に、内閣は総辞職することになるので注意。
48-13)衆議院が解散されても、参議院はそのまま活動を続け、会期は継続する。
×
「参議院はそのまま活動を続け、会期は継続する」→参議院も同時に閉会し、会期は継続しない。
※両議院の同時活動の原則により、衆議院が解散されれば、参議院も閉会となる。(憲法54条2項)。
48-14)日本国憲法は「会期中に議決に至らなかった案件は、後会に継続しない」とするが、各議院の議決で付託され閉会中に審査した案件は、後会に継続するのが慣例である ×
※日本国憲法にこのような規定は存在しない。
※「会期中に議決に至らなかった案件は、後会に継続しない」との規定は日本国憲法の規定ではなく、国会法の規定である。(国会法68条本文)。
48-15)緊急集会を開く場合を除き、両議院は同時に閉会される。
※国会の同時活動の原則の例外として、参議院の緊急集会がある。憲法54条2項但書。
48-16)衆議院の解散中に参議院の総数の1/4以上の要求があれば、内閣は、参議院の緊急集会の召集を決定しなければならない。 ×
※このような規定はない。
※参議院の緊急集会を求める権能は内閣だけが持っている(憲法54条2項)。臨時会の召集の場合と混同しないこと(憲法53条参照)。
48-17)参議院の緊急集会において採られた措置は、臨時のものであって、次の国会開会の後10日以内に、衆議院の同意を得られないときは、それらの措置は決定のときにさかのぼってその効力を失う。 ×
※「さかのぼる」→将来に向かって。
※衆議院の同意が得られない場合の「効力を失う」という規定は「将来に向かって失う」という意味と解される。
48-18)両議院は、各々その総議員の1/4以上の出席がなければ、議事を開き議決することができない。 ×
※「1/4」→1/3以上の出席
※定足数「総議員の1/3以上」憲法56条1項。
50-19)両議院の議事は、憲法に特別の定めがる場合を除き、総議員の過半数で決し、可否同数のときは、議長の決するところによる。 ×
※「総議員」→出席議員の過半数
※表決数の原則は「出席議員の過半数」憲法56条2項。
50-20)両議院は、出席議員の過半数で議決したときは、秘密会を開くことができる。 ×
※「過半数」→2/3以上。
※「出席議員の2/3以上」の多数で可決した場合に秘密会を開くことができる。
50-21)両議院は、秘密会の場合を除いて、会議の記録及び各議院の表決を公表しなければならない。 ×
※「秘密会の場合を除いて」→秘密会の記録の中で特に秘密を要すると認められたもの以外は・・・
※秘密会の議事のすべてが非公開になるわけではないので注意(憲法57条2項)。また各議員の表決は、出席議員の1/5以上の要求があったときに会議録に記載されるものであり(憲法57条3項)、秘密会であるか否かを問わず公開されないことがある。
50-22)罷免の訴追を受けた裁判官の裁判は、衆議院議員で組織する弾劾裁判所において行われる。 ×
※「衆議院議員」→両議院の議員。
※弾劾裁判の裁判員は、「両議院」の議員で組織される。(憲法64条1項)。
52-23)両議院において、それぞれの議員の資格に関する争訟の裁判を行い、議員の議席を失わせるには、出席議員の過半数による議決が必要である。 ×
※「過半数」→2/3以上の多数。
※議院の資格争訟の裁判についての規則(憲法55条)である。議員の議席を失わせるには「出席議員の2/3以上」の多数による議決が必要。
52-24)両議院は、それぞれ総議員の2/3以上の多数による議決がなければ、院内の秩序をみだした議員の除名をすることができない。 ×
※「総議員」→出席議員
※議員を除名するには「出席議員の2/3以上」の多数による議決が必要。憲法58条2項但書。
52-25)両議院は、各々院内の秩序を乱した議員を懲罰することができるが議員を除名するには裁判所の審判を必要とする。 ×
※「裁判所の審判」→出席議員の2/3以上の多数による議決が必要。
※議員を除名をするには裁判所の審判は不要。憲法58条2項。
52-26)両議院は、各々国政に関する調査を行い、これに関して、証人の出頭及び証言ならびに物品の押収を要求することができる。 ×
※「物品の押収」→記録の提出。
※国政調査権の調査手段としては捜索や押収は許されていない。憲法62条。
54-1)内閣は、行政権の行使について、衆議院に対して連帯して責任を負う。 ×
※「衆議院」→国会
※内閣の連帯責任は「国会」に対して行うもの(憲法66条3項)。
54-2)内閣総理大臣は、国会議員の中から国会の議決で、これを指名する。
憲法67条1項前段
※なお、内閣総理大臣は国会の議決で指名され、天皇が任命する。
54-3)内閣総理大臣は、その他の国務大臣と同様に、文民でなければならないが、必ずしも国会議員である必要はない。 ×
※「必ずしも国会議員である必要はない」→必ず国会議員である必要あり
※内閣総理大臣は文民であり、かつ国会議員でなければならない。(憲法66条2項、67条1項)。
※一方、国務大臣は文民でなければならないが、必ずしも国会議員である必要はない。(憲法66条2項、68条1項)。
54-4)内閣総理大臣は、閣議の決定を経て国務大臣を罷免することができるが、国会において国務大臣の不信任の決議案が可決された場合は、閣議の決定を経ずに国務大臣を罷免することができる。 ×
※罷免の決定は総理大臣の任意で決めてよい。問いのような規定は存在しない。
56-5)内閣総理大臣は国務大臣を任命するが、その過半数は、国会議員の中から選らばなければならない。
※憲法68条1項。
※国務大臣の過半数は国会議員でなければならない。
56-6)国務大臣の過半数は、衆議院議員でなければならない。 ×
※「衆議院議員」→国会議員
※国務大臣の過半数は国会議員であればよい(憲法68条1項)。
56-7)内閣は、衆議院で不信任の決議案を可決したときは、10日以内に総辞職しなければならない。 ×
※「総辞職しなければ・・・」→解散か、総辞職かを選べる。憲法69条。
56-8)衆議院議員選挙の後に初めて国会の召集があったときは、内閣は、総辞職しなければならないが、新たに内閣総理大臣が任命されるまでは、引き続きその職務を行う。
※憲法70条、71条。
※衆議院で内閣不信任案が可決され、内閣が衆議院を解散した場合には、衆議院議員総選挙後の特別会の召集時に、内閣は総辞職することになる。
56-9)新しい内閣総理大臣が、まだ国務大臣を1人も任命していないうちは、前の内閣が引き続き職務を遂行する。 ×
※「遂行する」→しない。
※前の内閣が引き続き職務を行うのは、新しい内閣総理大臣が任命されるまでである。憲法71条。
58-10)内閣は、事前ないし事後に国会の承認を得ることを条件として、条約を締結する権能を持っている。
※内閣には条約締結の権限があるが、国会の承認は必要(憲法73条3号)。
58-11)大赦、特赦、減刑、刑の執行の免除及び復権の決定は内閣が行う。
※なお天皇の承認が必要。憲法7条6号。
58-12)国務大臣はその在任中、内閣の同意がなければ訴追されない。 ×
※「内閣」→内閣総理大臣

※「訴追」
(1)検察官が刑事事件につき公訴を提起し、これを維持すること。(2)弾劾の申立てをして裁判官・人事官の罷免を求めること。→弾劾裁判所。(3)検事総長などが司法警察職員の懲戒・罷免を求めること。
58-13)内閣総理大臣は法律及び政令に連署しなければならない。
※憲法74条。
※主任の国務大臣の署名も必要。
58-14)内閣総理大臣は答弁又は説明のために出席を求められた時は、議院に出席しなければならない。
※憲法63条前段。
※内閣総理大臣及び国務大臣は、議院に対して出席権だけでなく、出席義務も負っている(憲法63条後段)。
60-1)司法権とは、民事事件および刑事事件の裁判権にとどまらず、行政事件の裁判権をも含むものである。
※憲法76条1項は「すべての司法権は、最高裁判所および法律の定めるところにより設置する下級裁判所に属する」と規定している。「すべて」には行政事件訴訟も含まれる。裁判所は、行政事件も裁定する権限を有する。
60-2)具体的な権利義務ないし法律関係に関する紛争であっても、宗教上の教義に関する判断などが必要で、事柄の性質上法令の適用により解決するのに適しないものは、裁判所の審判の対象となり得ない。
※裁判所の司法権は「法律上の争訟」を対象とし、「法律上の争訟」とは(1)当事者間の具体的な権利義務ないし法律関係の存否に関する紛争であって、かつ(2)それが法令を適用することによって終局的に解決できるものをいう。
※判例(板まんだら事件)は「本件訴訟は、その実質において法令の適用による終局的な解決の不可能なものであって、法律上の争訟にあたらない」としている。
60-3)国会の両議院における法律制定の議事手続きについては、両議院の自主性を尊重すべきであるから、裁判所は、その議事手続きに関する事実を審理して当該法律の有効、無効を判断すべきでない。
※警察法改正無効事件の判例と同旨。
※「自律権」に属する行為については、司法審査の対象とはしないと判断した判例である。
※「自律権」とは懲罰や議事手続きなどの国会の各議院の内部事項について自主的に決定できる権能をいう。
62-4)国家統治の基本に関する高度に政治性のある国会行為は、それが法律上の争訟になり、有効無効の判断が法律上可能であっても、司法審査の対象にならない。
※苫小牧事件の判例と同旨。
※判例は国家統治の基本に関する高度に政治性のある国家行為は、司法審査の対象とはならないとしており、この考え方を「統治行為論」という。
62-5)衆議院の解散がいかなる場合に許されるかは、裁判所の判断すべき法的問題であるのに対して、これを行うために憲法上必要とされる助言と承認の手続きに瑕疵があったか否かは、国家統治の基本に関する政治的な問題であるため、裁判所の審査権は及ばない。 ×
※「判断すべき、である」→判断すべきでない
※判例(苫米地とまべち事件)は、統治行為論に基づき、衆議院の解散の効力について、手続きの瑕疵のみならず、いかなる場合に許されるかについても裁判所の審査権が及ばないとしている。
62-6)地方議会の議員の除名処分は、議員の身分の喪失に関する重大事項であるから、単なる内部規律の問題ではなく、司法審査の対象になる。
※村会議員出席停止事件の判例と同旨。
※判例は、地方議会における除名処分は司法審査の対象とする一方で、出席停止は、団体の内部事項であり、司法審査の対象とはならないとしている。このような考え方を「部分社会の法理」という。
62-7)大学は、一般市民社会と異なる特殊な部分社会を形成しているから、単位認定行為のような内部的問題は、特殊の事情がない限り、司法審査の対象にならない。
※富山大学単位不認定事件の判例と同旨。
※大学の単位認定行為のような内部的問題は、司法審査の対象とはならないとするのが判例である。一方で、専攻科修了(卒業)の認定、不認定に関する争いは司法審査の対象になるとされている。
64-8)政党の結社としての自主性にかんがみれば、政党の内部的自立権に属する行為は、法律に特別の定めが無い限り尊重すべきであり、政党が党員に対してした処分は、一般市民法秩序と直接の関係を有しない内部的な問題にとどまる限り、裁判所の審判は及ばない。
※共産党袴田事件の判例と同旨。
※政党も部分社会の法理の適用される団体の一つとして考えられる。なお、政党による除名処分の当否につき、「原則として政党等による自立的な解決に委ねられる」と判断した判例もある(日本新党繰上補充事件)。
64-9)すべて司法権は、最高裁判所および法律の定めるところにより設置する下級裁判所並びに特別裁判所に属する。 ×
※「特別裁判所」→削除
※特別裁判所の設置は禁止されている(憲法76条2項前段)。よって司法権が特別裁判所に属することはない。
64-10)裁判官弾劾裁判所および家庭裁判所は、特別裁判所である。 ×
※「家庭裁判所は特別裁判所である」→ではない。
※裁判官弾劾裁判所は特別裁判所である。憲法自身が認めている例外
64-11)行政機関は、終審として裁判を行うことはできない。
※行政機関は終審として裁判を行うことはできないが、前審としてなら裁判を行うことができる。
64-12)最高裁判所は、訴訟に関する手続き、弁護士、裁判所の内部規律および司法事務処理に関する事項について、規則を定める権限を有する。
※最高裁判所の規則制定権を定めた条文。
66-13)裁判の対審および判決は、いかなる時においても公開判決で行わなければならない。 ×
※「対審」→対審は含まない。
※裁判の判決はいかなる場合も公開しなければならないが、裁判の対審は、いつも公開しなければならないわけではなく、裁判官の全員一致で、公の秩序または善良の風俗を害する恐れのあると決した場合には、非公開とすることができる(憲法82条2項)。

※対審→当事者を対立関与させて行う訴訟の審理。民事訴訟における口頭弁論、刑事訴訟における公判手続がこれに当る。公開を原則とする。対理

66-14)政治犯罪に関する事件については、裁判官の全員一致で決した場合は、非公開で対審を行うことができる。 ×
※「行うことができる」→できない。
※政治犯罪、出版に関する犯罪、憲法第3章で保障する国民の権利が問題となっている事件の対審は、常に公開しなければならない(憲法82条2項)。
66-15)すべての裁判官は、その良心に従い協力してその職権を行い、憲法および法律にのみ拘束される。 ×
※「協力して・・・」→独立して
※裁判官の職権の独立を規定した原則的な規定(憲法76条3項)。
66-16)最高裁判所の裁判官は、国民審査による場合を除いては、裁判により心身の故障のために職務を執ることができないと決定された場合及び公の弾劾による場合以外は、罷免されることはない。
憲法78条前段、79条3項。
※最高裁判所の裁判官の罷免理由は3つ。
(1)裁判により心身の故障のために職務を執ることができないと決定された場合
(2)公の弾劾による場合
(3)国民審査による場合がある。
66-17)裁判官の懲戒処分は、行政機関がこれを行うことができない。
※憲法78条後段。
※条文で明記されているのは行政機関だけであるが、立法機関(国会)による懲戒処分も許されないと解されている。つまり裁判官の懲戒処分は裁判所自身で行われる。
68-18)最高裁判所は、その長たる裁判官及び法律の定める員数のその他の裁判官でこれを構成し、そのすべての裁判官は内閣が任命する。 ×
※「すべての裁判官」→長たる裁判官以外の裁判官は内閣が任命する(憲法79条1項)。
※最高裁判所の長たる裁判官を任命→天皇(憲法6条2項)。
68-19)下級裁判所の裁判官は、最高裁判所の指名した者の名簿によって、内閣でこれを任命する。
※憲法80条1項。
※下級裁判所の裁判官は、最高裁判所の指名した者の名簿によって内閣がこれを任命する。
68-20)下級裁判所の裁判官は、法律の定める年齢に達した時には退官するが、最高裁判所の裁判官は定年はない。 ×
※最高裁も下級裁判所の裁判官も定年がある。(憲法79条5項、80条1項)。70歳
68-21)最高裁判所裁判官及び下級裁判所の裁判官の報酬は在任中、これを減額することはできない。
※憲法79条6項、80条2項。最高裁判所の裁判官、下級裁判所の裁判官ともに報酬の減額はできない。
68-22)下級裁判所の裁判官については、国民審査の制度がなく、任期が20年と定められているが、任期満了の際に再任されることができる。 ×
※「20年」→10年。
※下級裁判所の裁判官の任期は10年である。憲法80条1項。
70-23)最高裁判所の裁判官は、衆議院議員の総選挙、または参議院議員の通常選挙のうち、その任命後最初に行われる選挙の際に国民審査に付される。 ×
※「又は参議院議員選挙の通常選挙のうち」→削除。
※最高裁判所の裁判官の国民審査は、衆議院議員総選挙の際にのみ行われる(第79条2項)。
70-24)最高裁判所の裁判官は国民審査において投票者の多数が裁判官の罷免を可とするときは罷免される。
※国民審査で投票者の過半数が罷免を可とするときは罷免されることになる(憲法79条3項。)。
70-25)最高裁判所は、法令が憲法に適合するかしないかを決定する権限を有する終審裁判所である。
※最高裁判所には違憲立法審査権がある(憲法81条)。
70-26)裁判所が具体的事件を離れて抽象的に法律命令等の合憲性を判断できるとするという見解には、憲法上及び法令上の根拠がない。
※警察予備隊違憲訴訟の判例と同旨。
※憲法81条は付随的違憲審査制を定めたものと解されているので、抽象的な法令の合憲性審査はできない。
70-27)憲法81条の列挙事項に挙げられていないので、日本の裁判所は、条約を違憲審査の対象とすることはできない。 ×
※「できない」→できる。
※判例(砂川事件)は「日米安全保障条約は、一見きわめて明白に違憲無効であると認められない限り、裁判所の司法審査権の範囲外のものである」と述べて、裁判所の司法審査の余地を認めれているので、裁判所は、条約についての違憲審査も可能と考えられる。
72-1)新たに租税を課すには、法律又は法律の定める条件によることを必要とする。
※憲法84条。
※租税法律主義を規定した条文である。法律だけでなく法律の定める条件でもいいので注意。
72-2)我が国は租税法律主義をとっているので、地方公共団体は、地方税について条例によりその税目、税率等を定めることはできない。 ×
※「できない」→できる。
※地方税について条例で定めることは、租税法廷主義を規定した憲法84条に反しない。
72-3)法律で国費の支出を要する行為が定められている場合であっても、それらの行為に伴って国費を支出するには、国会の議決に基づくことを必要とする。
※憲法85条。
※国費を支出する場合には予算という形で国会の議決を経る必要がある。
72-4)国が債務を負担するには、国会の議決に基づくことを必要とする。
※憲法85条。
※国費を支出するだけでなく、債務を負担する場合にも国会の議決に基づく必要がある。
72-5)予算の提出権は内閣に専属しているので、国会議員は、予算を伴う法律案を発議することはできない。 ×
※「できない」→できる。
※国会議員は、法律案提出権を有しているので、たとえ予算措置が必要な法律案であっても提出することは可能である。なお、予算の提出権は、内閣のみが有している。
74-6)予算は、一会計年度の間のみ通用し、数年にわたって支出されることは許されず、例外は認められない。 ×
※「例外は認められない」→認められる。
※数年度にわたり支出されるものを継続費といい、会計年度独立の原則の例外として認められる。財政法14条の2。
74-7)予備費は、予見し難い予算の不足に充てるため、国会の議決に基づいて設けられ、内閣の責任において支出されるものであるから、その支出については必ずしも事後の国会の承諾を得る必要はない。 ×
※「必要はない」→必要がある。
※憲法87条2項は「すべて予備費の支出については、内閣は、事後に国会の承諾を得なければならない」と規定されている。
74-8)予備費の支出について事後に国会の承諾が得られない場合でも、すでになされた支出は有効である。
※予備費の支出について事後に国会の承諾が得られない場合でも、内閣の政治的責任が生じるにすぎず、既になされた支出は有効である。
74-9)皇室財産については、憲法上、すべて国に属するものと定められ、皇室の費用も、すべて予算に計上して国会の議決を経なければならないとされている。
※憲法88条。
※皇室財産は「すべて」国に属し、皇室の費用も「すべて」予算に計上され、国会の議決が必要とされている。
74-10)宗教上の組織又は団体の使用、便宜若しくは維持のため、公金その他の公の財産を支出し、又はその利用にともしてはならないが、公の支配に属しない慈善事業に対しては、公金その他の公の財産を支出し、又はその利用に供することができる。 ×
※「できる」→できない
※前半は政教分離の原則を財政面から保障するための規定であり、後半は、公財産の濫費を防止するための規定。
76-11)決算は、予算の場合と同様、先に衆議院に提出しなければならない。 ×
※「決算は・・・先に提出しなければならない」→必要なし。
※予算と異なり、決算には衆議院の先議権はない。衆議院の先議権が規定されているのは、予算のみ(憲法60条1項)。
76-12)会計検査院は、毎年、国の収入支出の決算を検査し、内閣は、次の年度に、その検査報告とともに、決算を国会に提出しなければならない。
※憲法90条1項。
※決算を国会に提出するのは、会計検査院ではなく内閣である。
78-1)地方公共団体の組織及び運営に関する事項は、地方自治の本旨に基づいて、条例でこれを定める。 ×
※「条例で」→法律で定める。
※憲法92条の条文。
78-2)地方公共団体の長及びその議会の議員は、その地方公共団体の住民が、直接選挙する。
※地方公共団体の長・議会の議員は、住民による直接選挙が憲法上保障されている。憲法93条2項。
78-3)地方公共団体の議会の議員を選挙する権利は、外国人にも保障されている。 ×
※「保障されている」→されていない。
※選挙権は、地方・国政両者ともに外国人には保障されていない。
78-4)日本に在留する外国人のうちでも、永住者等であってその居住する区域の地方公共団体と特に緊密な関係を持っているものに、法律によって地方公共団体の長、その議会の議員に対する選挙権を付与することは、憲法上禁止されない。
※外国人地方参政権事件の判例と同旨。
※人権として保障されてはいないが、法律で与えることは可能(許容説:判例)。ただし「永住者等」とされており、外国人一般に認められる訳ではない、「法律で」とされており条例では不可能である点を注意。
78-5)地方公共団体は、事務を処理し、及び行政を執行する機能を有するが、財産を管理する機能を有しない。 ×
※「有しない」→有する。憲法94条。
80-6)国会は、国の唯一の立法機関であるが、地方公共団体も法律の範囲内で条例を制定することができる。
※地方公共団体の条例制定は、法律の範囲内で可能。なお、地方公共団体の条例制定権は国会中心立法の原則の例外である。
※憲法94条。
80-7)一つの地方公共団体のみに適用される特別法は、その地方公共団体の議会の同意を得なければ、国会は、これを制定することはできない。 ×
※「議会の同意」→住民の同意。
※その地方公共団体の住民投票において過半数の同意が必要である。
※これは国会中心立法の原則の例外である。
※憲法95条。
80-8)両議院の議事は、憲法に特別の定めのある場合を除いて、出席議員の過半数で決するが、懲罰によって議員を除名する場合、法律案について衆議院で再可決する場合及び憲法改正を発議する場合は、いずれも出席議員の2/3以上の賛成を必要とする。 ×
※「憲法改正を発議する場合」→削除。
※憲法改正の発議には各議院の「総議員」の2/3以上の賛成が必要である。憲法96条1項。
80-9)日本国憲法の改正について両議院の意見が一致しない場合には、衆議院の議決が国会の発議となる。 ×
※「衆議院の議決が国会の発議となる」→このような規定はない。
※憲法改正については、衆議院の優越はない。
80-10)日本国憲法の改正について国民の承諾を得るには、特別の国民投票においてその2/3以上の賛成が必要である。 ×
※「2/3以上の」→過半数。
※国民の承諾を得るには、特別の国民投票又は国会の定める選挙の際に行われる投票において、その過半数の賛成が必要である(憲法96条1項)。
※国会の発議の用件と国民投票の用件を混同しないように注意。
82-11)日本国憲法の改正について国民の承諾を経たときは、内閣総理大臣は、直ちにこれを公布する。 ×
※「内閣総理大臣」→天皇。
※天皇が公布する(憲法96条2項)。
82-12)憲法改正には限界があり、この憲法が保障する基本的人権を憲法改正手続によって削除することは、論理的に許されないとするのが、通説である。
※憲法改正には限界があるとするのが通説。
※たとえば基本的人権の保障や国民主権などは憲法改正手続によっても改正できないと考える憲法改正限界説が通説。
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