86-1)胎児は、不法行為に基づく損害賠償の請求権については、既に生まれたものと見なされる。
※損害賠償請求権に関しては、胎児にも権利能力が認められている。胎児には原則として権利能力は認められないが(民法3条1項)、
(1)不法行為に基づく損害賠償請求権(同法721条)、
(2)相続を受ける権利(同法886条1項)、
(3)遺贈を受ける権利(同法965条)に関しては、例外的に権利能力が認められている。
86-2)未成年者でも、婚姻をすると成年に達したものと見なされる。
※成年擬制。この制度は離婚しても失われない。
86-3)未成年者の法律行為は、単に権利を得又は義務を免れるべき行為といえども、法定代理人の同意を必要とする。 ×
※「必要とする」→必要としない。
※未成年者は「単に権利を得又は義務を免れるべき行為」、たとえば単純な贈与を受けること等は、法定代理人の同意を必要とせず、単独で有効に法律行為を行うことができる。
88-4)未成年者が単に義務を免れる法律行為を行う場合には法定代理人の同意を要しないので、未成年者が法定代理人の同意を得ないで行った弁済の受領は、取り消すことができない。 ×
※「できない」→できる。
※弁済の受領は、有している債権を消滅させることになるので「単に権利を得又は義務を免れるべき行為」(民法5条1項但書)に該当せず。未成年者は法定代理人の同意を得ずに有効に行うことはできない。よって取り消すことも不可。
88-5)未成年者は、法定代理人から営業の許可をされた場合には、その営業に関しては成年者と同一の能力を有する。
※民法6条1項。
※営業に関して完全な行為能力を有することとなる。
88-6)Aが19歳の時に、その法定代理人Bの同意を得ずにCにAの所有する不動産を売却した場合に、A及びBは、Aが成年に達したときには、AC間の売買契約を取り消すことができない。 ×
※「できない」→できる。
※制限行為能力者の取消権は、取消権者が追認することができる時から5年、行為の時から20年で消滅する(民法126条)。よって法定代理人Bが知った時又は未成年者Aが成年者になった時から5年で取消権は消滅する。Aが成年に達した時に取消権が消滅するわけではない。
88-7)成年被後見人が成年後見人の同意を得て行った財産上の法律行為は、取り消すことができない。 ×
※「できない」→できる。
※成年後見人には同意権がなく、成年被後見人は、日常生活に関する行為を除いて、同意を得ても有効に法律行為をなすことはできない。よって成年後見人の同意を得て行った行為でも取り消すことができる。
90-8)制限行為能力者が成年被後見人であり、相手方が成年被後見人に日用品を売却した場合であっても、成年被後見人は制限行為能力を理由として自己の行為を取り消すことができる。 ×
※「できる」→できない。
※成年被後見人の法律行為は、原則として取り消すことができる(民法9条本文)が、日用品の購入その他日常に関する行為について取り消すことができない。(民法9条但書)。
90-9)自然人ばかりでなく法人も、成年後見人になることができるが、株式会社等の営利法人は、成年後見人になることはできない。 ×
※「営利法人は・・・できない」→営利法人もできる。
※成年後見人は法人もなることが可能(民法843条4項かっこ書)、この場合の法人の用件は特に法定されていないので、株式会社等の営利法人も成年後見人になることが可能である。
90-10)本人以外の者の請求によって保佐開始の審判をするためには、本人の同意が必要である。 ×
※「必要で・・・」→不要。
※保佐開始の審判をするために、本人の同意は不要である(民法11条)。一方、補助開始の審判をするためには、本人の同意が必要となるので注意(民法15条2項)。
90-11)被保佐人が行った元本の領収は、保佐人の同意を得ていなくても、取り消すことができない。 ×
「できない」→できる。
※元本の領収は、保佐人の同意を要する行為の一つである(民法13条1項1号)。よって取り消すことができる。
90-12)被保佐人が、保佐人の同意を得ることなく自己が居住するための住宅を建築するために土地の購入の申し込みをなす行為は、取り消しうる。
※土地の購入の申し込みをすることは「不動産その他重要な財産に関する権利の得喪を目的とする行為をすること」(民法13条1項3号)に該当するので、保佐人の同意を必要とする。よって。同意がない場合には取り消すことができる。
92-13)被保佐人が、保佐人の同意を得ることなく土地の贈与を受け取る行為は、取り消しうる。 ×
「取り消しうる」→取消えない。
※贈与を受けることは保佐人の同意を要する行為に列挙されていない。よって保佐人の同意がなくても取り消すことはできない。
92-14)精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分である者について、本人、配偶者、4親等以内の親族は、補助開始の審判を請求することはできるが、後見人や保佐人は、これをすることができない。 ×
「できない」→できる。
※後見人も保佐人も、補助開始の審判の請求権者である(民法15条1項本文)。たとえば成年被後見人や被保佐人が精神障害の程度が軽くなった場合に、成年後見人や保佐人が補助開始の審判を請求するケースなどが考えられる。
92-15)補助人が選任されている場合においても、家庭裁判所は、必要があると認めるときは、さらに補助人を選任することができる。
※補助人は複数選任可能。
※成年後見人、保佐人、補助人については、複数選任することが可能である。(民法843条3項、876条の2第2項、876条の7第2項)。一方、未成年後見人は、一人しか選任できないので注意。民法842条。
92-16)法定代理人の同意なくしてなされた未成年者の財産行為で、相手方が法定代理人に対し、1箇月以上の期間内に当該財産行為を追認するか否か確答すべき旨を催告したが、確答が発せられなかった場合の、その未成年者の行為は取り消しうる。 ×
「取り消しうる」→取り消せない。
※法定代理人に対して催告をしたにもかかわらず、法定代理人が確答をしない場合には、"追認したものと見なされる(民法20条1項、2項)"。よって確答が発せられなかった場合、もはや未成年者の行為を取り消すことはできない。
94-17)制限行為能力者が未成年者の場合、相手方は、未成年者本人に対して、1か月上の期間を定めてその行為を追認するかどうかを催告することができ、その期間内に確答がなければその行為を追認したものと見なされる。 ×
「未成年者」→法定代理人
※未成年者が未だ制限行為能力者である間は、催告は法定代理人に対して行わなければならず(民法20条1項)、未成年者に対して行った催告は無効であって何の効力も持たない。
94-18)制限行為能力者が相手方に行為能力があると信じさせるために詐術を用いたときは、制限行為能力者は、制限行為能力を理由にその法律行為を取り消すことができない。
民法21条。
※なお単に黙秘していただけでは「詐術」に該当しないが、単に黙秘をしていただけでなく、他の言動と相まって相手方を誤信させ、また誤信を強めた場合には「詐術」に該当する。判例。
94-19)制限行為能力を理由に法律行為が取り消された場合に、制限行為能力者は、その行為によって現に利益を受けている限度において、返還の義務を負う。
制限行為能力者は現に利益を受けている限度で返還義務を負う。
※民法121条但し書き。「現に利益を受けている限度」を現存利益という。なお生活費に使ってしまった場合には現存利益はあるが、ギャンブルや遊興等で浪費してしまった場合には現存利益はないとされている。従って生活費に充てた分は返還義務を負うが、ギャンブルで浪費してしまった分については返還義務は負わない。
96-1)無効な法律行為は、追認によってその効力を生ずる。 ×
「生ずる」→生じない。
※無効な行為を追認しても有効な行為とはならない(民法119条本文)。
96-2)無効な法律行為であっても当事者が無効であることを知りながら追認したときは、常に行為のときにさかのぼって効力を生ずる。 ×
「生ずる」→生ずるわけではない。
※当事者が無効であることを知った以上で追認した場合、その時点において新たに行為をしたものとみなすことはできる(民法119条但書)。よって、常に行為をしたときにさかのぼって効力を生ずるわけではなく、単にその時点で新しい行為をしたものとみなすことができるにすぎない。
96-3)取り消しうる法律行為を取り消したときは、その取消の時から将来に向かって効力を失う。 ×
「取消の時から将来に向かって」→行為の時にさかのぼって

※取消の効果は遡及的なもの。
※遡及的・・・過去に遡ること。
96-4)取り消しうる法律行為は、制限行為能力者又は瑕疵ある意思表示をした者に限り取り消すことができる。 ×
「・・・に限り」→以外にも。
※制限行為能力者又は瑕疵ある意思表示をした者以外にも制限行為能力者・瑕疵ある意思表示をした者の代理人や承継人、同意権者も取消権を有する。(民法120条)。
96-5)取消権は、追認することができるときから5年間これを行わないときは時効によって消滅する。
※取消権は、取消権者が追認することができるときから5年、行為の時から20年で消滅する。民法126条。
98-6)取り消しうる法律行為を追認した時は、その追認の時から将来に向かって有効となる。 ×
※「その追認したときから将来に向かって有効となる」→有効な行為として確定する。
※追認は、追認される以前から有効であった取り消し得る行為を有効に確定する行為に過ぎず、追認の時から有効となるわけではない(民法122条本文)。
98-7)追認は、取り消しの原因である状況がなくなる前にするのでなければその効果はない。 ×
※なくなる前」→なくなった後。
※「追認は取り消しの原因となった状況が消滅した後にしなければ、その効力を生じない(民法124条1項)」と規定されており、制限行為能力者の場合には行為能力者となった後、詐欺、脅迫の場合にはその状況を脱した後でなければ有効に追認はできない。
なぜなら、自由で正常な判断が可能となる前でも追認可能としてしまうと、法が制限行為能力者や詐欺、強迫を受けた者に取消権を認め、保護した意味がなくなってしまうからである。
100-1)表意者が真意でないことを知っていながら行った意思表示は、相手方が表意者の真意を知っていたときであっても無効とはならない。 ×
「無効とはならない」→無効となる。
※表意者が真意でないことを知りながら行った意思表示を"心裡留保"という。心裡留保の場合、原則として、その意思表示は有効であるが、相手方が表意者の真意について悪意又は有過失の場合、無効となる(民法93条)。
100-2)相手方と通じて行った虚偽の意思表示は、その当事者間においても無効である。
※当事者間においては原則通り無効である。
※虚偽表示は原則無効(民法94条1項)。虚偽表示を行った当事者間においては、取引の安全に配慮する必要はないので、原則通り無効となる。
100-3)Aは、譲渡の意思がないのに、債権者の差し押さえを免れるために、Bと通じてA所有の土地をBの名義にした。Cはその事実を知らずにその土地を購入したが、その土地はC所有のものとはならない。 ×
「ならない」→なる。
※AとBの間では、虚偽表示がなされているが、「意思表示の無効は第3者に対抗することができない」(民法94条2項)ので、Aは善意の第3者Cに対して、AB間の譲渡が虚偽表示で無効であることを主張することができない。よって、土地はA→B→Cと移転したことになり、C所有となる。なお94条2項の第3者として保護されるためには、善意であればよく無過失である必要も登記も必要なし。
100-4)AがB所有の土地をCに売却した。所有権者Bが自らA名義で登記して虚偽の外形を積極的に作出し、そのまま放置していた場合には、Bは、Aを所有者だと信頼して買ったCに対抗できない。
※通牒がなくても94条2項の類推適用により善意の第三者は保護される。

(1)虚偽の登記(外形の存在)があり
(2)権利者がそれを明示・黙示に承認しており(権利者の帰責性)
(3)第三者の信頼(善意)がある場合、
94条2項を類推適用して善意の第三者を保護するのが判例・通説である。
102-5)不動産の真実の所有者Aの意志によりBの承諾なくしてB名義の不実の登記がなされ、その後、当該不動産がBから悪意のCに譲渡され、更にCから善意のDに譲渡された。
※94条2項の第三者には転得者も含まれる。
※本肢は94条2項が類推適用されるケースであり、94条2項の第三者には、Dのような転得者も含まれるので、善意のDは94条2項の第三者として、当該不動産の所有権を取得することができる。
102-6)錯誤による意思表示について、表意者に重大な過失がある場合であっても、表意者が自らその無効を主張することができる。 ×
「主張することができる」→できない。
※表意者に重大な過失があったときは、表意者は、自らその無効を主張することはできない。民法95条但書。
102-7)著名な陶芸家の真作とされていた陶器がA→B→Cと順次売却されたが、後にこれが贋作と判明した場合において、無資力であるBがその意思表示に要素の錯誤があると認めているときは、B自ら当該意思表示の無効を主張する意思がなくても、Cは、Bに対する売買代金返還請求権を保全するために、Bの意思表示の錯誤による無効を主張して、BのAに対する売買代金返還請求権を代位行使することができる。
※第3者にも例外的に錯誤無効の主張ができる。
錯誤無効は原則として、表意者のみが主張可能とされているが、※(1)表意者に対する債権を保全する必要があり、(2)表意者が錯誤を認めている場合には、例外的に第3者による錯誤無効の主張が可能である(判例)。
102-8)Aは、第3者Cの詐欺によりBの所有する土地を買ってしまったが、売主Bに対して、この意思表示を常に取り消すことができるとは限らない。
Bが悪意の場合のみ取り消すことができる。
※第3者による詐欺の場合には、相手方保護のため、相手方が悪意の場合のみ取り消すことができる(民法96条2項)。つまり、売主Bが詐欺の事実につき悪意の場合、取り消すことができるが、善意の場合は、取り消すことができない。よってAは常に取り消すことができるとは限らない。
104-9)詐欺による意思表示の取り消しは、善意の第3者に対抗することができる。 ×
「対抗することができる」→できない。
※詐欺による意思表示の取り消しは、善意の第3者に対抗することができない(民法96条3項)。
※なお96条3項の第3者とは"取り消し前の第3者"を指し、取り消し後の第3者の場合は、対抗問題で処理される(民法177条、178条)。
104-10)Aは、Bの強迫により、Bに土地を安価で売り、第3者Cは、そのことを知らずにBからその土地を買い受けた。この場合、Aは、Bとの契約を取り消し、Cに対してその土地に自らの所有権を主張することはできない。 ×
「主張できない」→主張できる。
※強迫による取り消しは善意の第3者にも対抗可能。よって第3者Cが善意であっても、Aは強迫による取り消しをCに対して主張することができる。また本肢のCは「取り消し前の第3者」である。
104-11)AはBの強迫によりB所有の不動産上の抵当権を放棄して登記を抹消、ついでBは、第3者Cのために当該不動産上に新たに抵当権を設定した。その後Aは、強迫を理由として抵当権の放棄を取り消した。この場合Aは、抵当権の登記を回復する前でもCに抵当権を対抗できる。
強迫による取り消しは善意の第3者の善意・悪意に関わらず対抗可能。
※「取消前の第三者」に対しては、強迫による取消を無条件に対抗できる(判例)。よってAは強迫による取消をCに対抗でき、登記の有無に関係なく、抵当権をCに対抗できる。
106-1)同一の法律行為について、相手方の代理人となり、又は当事者双方の代理人となることは、いかなる場合であっても許されない。 ×
「いかなる場合・・・」→原則として。
※同一の法律行為の当事者の一方が相手方の代理人となることを「自己契約」といい、同一人が当事者双方の代理人となることを「双方代理」という。これらは本人を害する可能性が高いので原則として禁止されているが、債務の履行と予め本人の許諾がある場合には、例外的に許されている(民法108条)。
106-2)代理権は、本人の死亡により消滅するが、代理人の死亡、代理人が後見開始、若しくは保佐開始の審判を受けたこと又は破産によっても消滅する。 ×
「保佐開始の審判を受けたこと」→削除。
※代理人が保佐の開始を受けたことは、代理権の消滅原因ではない(民法111条)。なお本人の死亡、代理人の死亡、代理人が破産手続開始の決定・後見開始の審判を受けたことは、任意代理・法定代理に共通の代理権消滅原因である。任意代理の場合には、さらに本人の破産手続開始の決定、委任の終了も代理権の消滅原因である(民法111条)。
106-3)使者が本人の意思を第3者に表示する場合、その意思表示に錯誤があったか否かは、使者を基準に判断する。 ×
「使者を基準に判断する」→本人を基準に判断。
※使者は意思表示の単なる伝達機関または表示機関に過ぎず、意思決定を行うのは本人自身である。錯誤の有無は「本人」を基準に判断される。なお、代理の場合、意思決定を行うのは「代理人」であるから、錯誤の有無も「代理人」を基準に判断される(民法101条1項)。
108-4)任意代理人は、制限行為能力者でもなることができる。
※代理人は制限能力者である必要はない。
※代理人の資格として行為能力があることは要求さていない(民法102条)
108-5)代理行為の効果は、代理してなされた法律行為から生ずる法律的な効果が直接本人に帰属することである。
「民法99条1項」。
※なお法律行為の当事者たる地位も本人に帰属するので、それに基づく取消権や解除権も本人に帰属する。
106-6)本人所有の甲不動産を処分するための代理権を与えられているAが、Bに不動産を譲渡する際、Bから受け取る代金は専ら自己の借金の返済に使うという意図を持って代理人として契約したが、Bは取引上相当な注意をしてもAのそのような意図を知ることができなかった場合、本人に契約上の効果が帰属する。
※代理人の権利濫用の場合、民法93条但書の類推適用によって処分するのが判例である。
※代理人が、その権利を濫用している本肢のような場合であっても、代理権の範囲内で法律行為をしている以上、有権代理となる。しかし、それでは本人に酷な結果となるので、相手方の取引の安全に配慮しつつ、本人の保護を図るため、93条但書を類推適用するのが判例の考え方である。これは代理人の意思決定が心裡留保に類似している点に着目したものである、具体的には代理行為の相手方が代理人の権限濫用の意図について善意かつ無過失である場合は、代理行為は有効であるが、代理行為の相手方が代理人の権限濫用の意図について悪意又は有過失である場合、代理行為は無効となる。
106-7)任意代理人は、本人の許諾又はやむを得ない事由がなければ復代理人を選任することはできないが、法定代理人は、本人の許諾を必要とせず、その責任において復代理人を選任することができる。
※法定代理人は自由に復代理人を選任できる。
※任意代理人は、本人の許諾又はやむを得ない事由がなければ復代理人を選任することはできないが(民法104条)、法定代理人は自己の責任で復代理人を選任することができる(民法106条)。
110-8)任意代理人は、復代理人の行為について、本人に対して全責任を負わなければならない。 ×
※「全責任を・・・」→原則として選任・監督の責任のみを
※任意代理人は、限定的にしか復代理人の選任ができないので、選任した場合の責任も原則として選任・監督責任に限定されている(民法105条)
110-9)代理人が本人の許諾を得て復代理人を選任した場合は、その後、代理人が死亡しても復代理人の代理権は、消滅しない。 ×
「消滅しない」→消滅する。
※復代理人の代理権はあくまでも代理人の代理権に基づくものなので、代理人の代理権が消滅すれば、復代理人の代理権も消滅する。
110-10)代理人は、復代理人を選任しても代理権を失うものではなく、選任後は復代理人と同等の立場で本人を代理することになる。
※復代理人選任後も、代理人の代理権は失われない。
110-11)復代理人は、代理人に対して権利義務を有し、本人に対しては何ら権利義務を有しない。 ×
「本人に対して何ら権利義務を有しない」→本人に対しても権利義務を有する。
※復代理人は本人および第3者に対して、代理人と同一の権利を有し、義務を負う(民法107条2項)。
110-12)代理権のない者が行った行為は、本人が追認すると、最初から代理権があったと同様の効果を生じさせる。
無権代理行為の追認には遡及効がある。
※「追認は、別段の意思表示がないときは、契約の時に遡ってその効力を生じる」(民法116条本文)と規定。
112-13)無権代理人が契約をした場合において、相手方は、代理権のないことを知らなかった時に限り、相当の期間を定め、当該期間内に追認するかどうか確答することを本人に対して催促することができる。 ×
「知らなかったときに限り」→知っていても。
※無権代理行為の相手方の催促権は、相手方の善意・悪意にかかわらず行使可能(民法114条)。
112-14)AがB所有の土地をCに売却した。AがBの代理人と称して売却した場合、代理権のないことを知らなかったCがこの売買契約を取り消せば、BはもはやAの代理行為を追認することはできない。
※無権代理の善意の相手方は、本人が追認をしない間は、取消権を有する(民法115条)。そして相手方が取消権を行使した後は、もはや本人が追認をすることはできない。
112-15)AがB所有の土地をCに売却した。AがBの代理人と称して売却した場合、Cは、Aに代理権のないことを過失によって知らなかったとしても、無権代理を行ったAに対して責任を追求できる。 ×
※できる→できない
※無権代理人に対する責任追及は、相手方が善意かつ無過失の場合のみ可能である(民法117条)。
112-16)AはBからB所有の絵画を預かっている。Aが代理権もないのにBの代理人と偽ってこの絵画をCに売却し、その後にAがBを共同相続した場合、Cは、Aの相続分に相当する共有部分については、当然に権利を取得する。 ×
「当然に権利を取得する」→当然に権利を取得するものではない。
※無権代理人が本人を共同相続した場合については、「他の共同相続人全員の追認がない限り無権代理行為は、無権代理人の相続分に相当する部分においても当然に有効になるものではない」とするのが判例である。
114-17)AはBにA所有の絵画を預けた。Bが、何の代理権もないのにAの代理人だと偽ってこの絵画をCに売却し、その後にAがBを相続したときは、AはBの行為つき追認を拒絶することができる。
※本人が無権代理人を相続した場合については、「本人が無権代理行為の追認を拒絶しても何ら信義則に反しない」(判例)から、本人は、無権代理行為の追認を拒絶することができる。
114-18)請負人とAとの間で下請負契約が締結されていたので、Aは工事材料の買い入れにあたって請負人を本人とし、自己がその代理人であるとしてBと契約した場合、本人に契約上の効果が帰属する。 ×
※単に下請負契約が締結されているだけでは、代理権授与の表示があったとは言えないので、表見代理(民法109条)は成立しない。なお、請負人が下請負人に、請負人の名義を使って工事をすることを許容していた場合には、代理権授与の表示があったと見なされるので、表見代理が成立し、本人に契約上の効果が帰属する(判例)。
114-19)官庁がその一部局と認められるような名称を使用させ、官舎の一部で第3者と取引することを認めた場合には、その官庁の代理人とする旨を表示したことになる。
※本肢の場合、相手方が善意・無過失であれ、代理権授与表示による表見代理(民法109条)が成立する。判例。
114-20)代理権の与えられていないAが、本人の代理人である旨を記載した白紙委任状を偽造して提示し、代理人と称したので、Bがそれを信じて契約をした場合、本人に契約上の効果が帰属する。 ×
「帰属する」→帰属しない。
※本人が「代理人である旨を記載した白紙委任状」を交付した場合には、代理権授与表示による表見代理(民法109条)が成立し得るが、無権代理人Aが偽造した場合には、本人には何らの帰責性も認められず、表見代理は成立しない。
116-21)本人から投資の勧誘を行うものとして雇われていたに過ぎないAが、本人の代理人としてBと投資契約をし、投資金を持ち逃げした場合、本人に契約上の効果が帰属する。 ×
「帰属する」→帰属しない。
※単なる事実行為をする権限は「権限外の行為の表見代理」(民法110条)の基本代理権とはなり得ない。投資の勧誘行為は、単なる事実行為に過ぎないので、投資の勧誘行為を任されている者が、代理人として法律行為を行った場合には、表見代理は成立しない(判例)。
116-22)表見代理が成立する場合には、本人は、無権代理人の行為を無効であると主張することができないだけでなく、無権代理人に対して損害賠償を請求することもできない。 ×
「損害賠償を請求することもできない」→請求できる。
※無権代理人の行為は、債務不履行(権限外の行為の表見代理の場合)又は不法行為(表見代理のすべての場合)にあたるので、本人は無権代理人に対して損害賠償請求することができる(民法415条,709条)。
118-1)取得時効の対象となるのは所有権だけであり、所有権以外の物件及び債権は、対象とはならない。 ×
「対象とならない」→対象となる。
※「所有権以外の財産権」、「債権」も時効取得の対象となりうる(民法163条)、取得時効の対象となる「所有権以外の財産権」として、地上権、永小作権、地役権があり、取得時効の対象となる「債権」としては賃借権がある。
118-2)Aは、B所有の土地をBの所有と知りつつ所有の意志を持って平穏かつ公然に10年間占有した場合に、その土地の所有権を取得する。 ×
「10年間」→20年間。
※悪意の占有者が土地の所有権を時効取得するためには、20年間占有を継続することが必要。(民法162条)。
118-3)確定判決により確定し、かつ確定当時に既に弁済期の到来している債権の消滅時効期間は、その債権が本来は短期消滅時効に係る債権であっても、10年である。
判決により確定した債権の消滅時効は10年となる。
※短期消滅時効が定められている債権であっても、判決により確定した債権は、判決確定により証拠力が強固になるので、時効期間は10年に伸長される(民法174条の2)。
118-4)期限の定めのない債権の消滅時効は、債権者が相当の期間を定めて催告し、その期間が経過したときから進行する。 ×
「債務者が相当の期間を定めて催告し、その期間が経過したときから」→債権成立時から。
※期限の定めのない債権の「消滅時効」の起算点は、債権成立時であるが(民法166条1項)、期限の定めのない債権が、「履行延滞」となるのは、催告時である(民法412条3項)。
120-5)債務の履行不能による損害賠償請求権の消滅時効は、債務の履行が不能になった時から進行するのが判例の立場である。 ×
「債務の履行が不能になった時から」→本来の債務の履行を請求できる時から。
※本来の債務と履行不能による損害賠償請求権は同一性を有するので、履行不能による損害賠償請求権の消滅時効の起算点は、本来の債務の履行を請求できるときから進行する(判例)。
120-6)取得時効にあたっては、時効期間中に目的物に生じた果実は、時効取得者に帰属する。
※「時効の効力は、その起算日に遡る」(民法144条)ので時効が完成すると、時効取得者は起算日から所有者であったことになる。よって時効取得者は、時効期間中に目的物から生じた果実を時効期間中に所有者であった者に対して返還する必要がなくなる。
120-7)当事者が時効を採用しなくても、時効完成が明らかであれば、裁判所は、これを前提として裁判をすることができる。 ×
「できる」→できない。
※「時効は、当事者が援用しなければ裁判所がこれによって裁判することができない」(民法145条)。
※「時効の援用」とは時効によって利益を受ける者が、時効の利益を受ける旨の意志を示すことである。
120-8)時効の利益は、時効完成後にこれを放棄することは許されるが、時効完成前にあらかじめこれを放棄することは許されない。
※時効完成前に時効の利益を放棄することはできない。
※民法146条の条文。「時効の利益」とは、時効によって権利を取得し、又は債務から免れることである。
122-9)時効中断後、時効中断事由が終了した時には、時効は新たに進行を開始するのではなく、時効中断時における残りの期間を経過することによって完成する。 ×
「新たに進行を開始するのではなく・・・」→新たに進行を開始する。
※「中断した時効は、その中断の事由が終了したときから、新たにその進行を始める」(民法157条1項)のであって、中断時から残りの時間を計算するのではない。
122-10)時効は、裁判上の請求によって中断し、その訴えにつき却下又は取り下げがあっても、時効中断の効力に影響はない。 ×
「効力に影響はない」→効力を生じない。
※裁判上の請求は、時効の中断事由であるが(民法147条1項)、訴えの却下、取り下げがあると時効中断の効力は生じなかったことになる。民法149条。
122-11)催告の後6箇月以内に裁判上の請求をしたときは、催告の時から時効中断の効力が生じる。
「催告」→裁判外で債権者が債務者に対して履行の請求をすること。
※催告から6箇月以内に裁判上の請求等をすれば、時効は完全に中断する(民法153条)。この場合、催告の時点において、時効の中断がなされたことになる。
122-12)被保佐人が保佐人の同意を得ずに債務を承認しても、時効は中断しない。 ×
「中断しない」→中断する。
※債務の承認をするには、行為能力は必要ないので(民法156条)、被保佐人・被補助人が単独でした債務の承認は、時効を中断させる。
124-1)A所有の甲地がBに譲渡され、さらにAB間の譲渡を知っているCに譲渡されCに所有権移転登記がされた場合、Bは登記なくしてCに対抗することができる。 ×
「対抗することができる」→対抗不可。
※悪意の第2譲渡人は177条の第3者に含まれる(判例)。よってCが第1譲渡について悪意があっても、Bは登記なくして、Cに対抗することができない。
124-2)甲は、丙が乙から土地を購入したが、まだその登記が未了であることを知っていた場合において、重ねて乙から譲り受け、丙より先に登記をしたときでも、甲は、丙に対抗できないことがある。
※甲が背信的悪意者の場合は対抗できないことになる(判例)。
※背信的悪意者は、民法177条の第3者にあたらず、登記がなくても対抗することができる(判例)。よって甲が、単なる悪意者を超えて、背信的悪意者と見なされる場合、丙は、登記なくとも、甲に対抗可能。したがって甲は丙に対抗できないことになる。
124-3)Aの所有する甲土地につきAがBに対して売却した後、Aが重ねて甲土地を背信的悪意者Cに売却し、さらにCが甲土地を悪意者Dに売却した場合に、第1買主Bは、背信的悪意者Cからの転得者であるDに対して登記をしていなくても所有権の取得を対抗できる。 ×
「対抗できる」→できない。
※背信的悪意者からの転得者であっても、転得者自信が背信的悪意者と評価されない限り、民法177条の第3者にあたる(判例)。従って、単なる悪意者である転得者Dは、民法177条の第3者であり、BはDに対して、登記をしていなければ所有権の取得を対抗できない。
124-4)A所有の甲地がBに譲渡されたが甲地には不法占拠者Cがいた場合、Bは登記なくしてCに対抗することができる。
※不法占拠者は民法177条の第3者に当たらない。
※不法占拠者は民法177条の第3者に当たらないので、A・C間は対抗関係に立たない。
126-5)乙が登記書類を偽造して甲所有の土地を自己名義に登記した後に、甲から丙に当該土地が譲渡された場合、丙は乙に対抗できる。 
※乙は民法177条の第3者にあたらない。
※登記書類を偽造して登記を取得した乙は実質的無権利者であり、民法177条の第3者にあたらない。よって、丙は登記が無くても乙に対抗することができる。また、乙からの転得者がいた場合、丙は、登記が無くても転得者に対抗することができる。登記を偽造した者だけでなく、その転得者も民法177条の第3者とは見なされない。 
126-6)土地が甲・乙・丙と順次譲渡されたが、まだ登記は甲にある場合、丙は甲に対抗できる。 
※順次譲渡の前主・後主は対抗関係に立たない。
※丙からみて甲は、自分の前の持主のさらに前の持主になる。実質的にみて、甲と丙は当事者の関係に立つので、民法177条の対抗関係には立たない。 
126-7)甲は、乙から土地を購入し登記を済ませたが、当該土地は、乙が未成年者丙からその法定代理人の同意なしに購入した者である場合において、丙が乙との売買契約を取り消したときでも、甲は丙に対抗することができる。 ×
「対抗できる」→対抗することはできない。
※制限行為能力者であることを理由に取り消しがなされた場合、未成年者(丙)は、取り消し前の第3者(甲)に対して、取り消しを対抗することができる。
126-8)A所有の甲地がBに売却され、さらに善意のCに売却された後、AB間の売買契約が詐欺を理由に取り消された場合、Aは登記なくしてCに取り消しを対抗することができる。 ×
「対抗することができる」→対抗することはできない。
※詐欺を理由とした取り消しは、善意の第3者(C)には対抗することはできない。取り消し前の第3者の場合、登記の有無は一切関係ない。
128-9)土地が、甲・乙・丙と順次譲渡され、丙が登記を済ませた場合、甲が強迫を理由に甲乙間の契約を取り消したときは、甲は善意の丙に対抗できる。
※強迫による意思表示の取り消しは善意の第3参議院にも対抗できる。
※詐欺の場合は、善意の第3者には対抗できない(民法96条3項)ので注意。ただし「強迫による意思表示の取り消しは第3者にも対抗できる」というルールはあくまでも、第3者が「取り消し前の第3者」である場合に適用される者である。「取り消し後の第3者」の場合は、対抗問題として処理される。
128-10)Bは、詐欺によりA所有の不動産をBに売却させ、後にAは、詐欺を理由としてAB間の売買を取り消したが、当該売買の取り消し後Aが当該不動産の登記を回復しないうちに、Bは、当該不動産を善意の第3者Cに譲渡し、Cは、当該不動産の登記を備えた。この場合、Aは、不動産売買の取り消しの効果をCに対抗できない。
※Aは取消後の第3者に対して、登記がなければ取消の効果を対抗できない。
※取消後の第3者の場合、取消の理由に関わらず、対抗問題(民法177条)によって処理するが判例である。よって登記がCにある以上、Aは取消の効果をCに対抗することができない。なお、ここでは第3者Cが善意であるか悪意であるかは関係ないので注意。
128-11)A所有の甲地につきBの取得時効が完成した後に、Aが甲地をCに譲渡した場合、Bは登記なくしてCに対抗することができる。 ×
「できる」→できない
※時効取得者と時効完成前の第3者との関係は、対抗関係で処理するのが判例である。よって、時効取得者と時効完成後の第3者の優劣は、登記の有無で決することになる。民法177条。
130-12)Aの所有する甲土地につきAがBに対して売却し、Bは、その後10年以上にわたり占有を継続して現在に至っているが、Bが占有を開始してから5年が経過した時にAが甲土地をCに売却した場合に、Bは、Cに対して登記をしなくては時効による所有権の取得を対抗することはできない。 ×
「対抗することはできない」→対抗することはできる。
※自己物の時効取得も可能であり、二重譲渡で劣化する第一買主Bも占有開始時に善意・無過失であれば10年間の占有で時効取得することが可能である(判例)。さらに、時効取得者Bは、時効完成前の第3者Cに対しては、登記をしなくても時効取得を対抗できる。
130-13)甲は、乙から土地を購入したが、その登記前に乙が死亡し、丙が相続登記を済ませた場合、甲は、丙に対抗することができる。
※甲は、乙の相続人に対しては登記なくして所有権取得を対抗することができる。
※乙と相続によって乙の地位を包括継承した丙は、実質的に一体と見なすことができ、甲と丙との関係も当事者の関係となる。よって、甲と丙は対抗関係には立たず、甲は登記がなくても丙に対抗することができる。
130-14)共同相続人の一人Aが相続を放棄し、他の共同相続人Bが特定の相続不動産の所有権を単独で承継したが、Bが当該不動産の登記を備えないうちに、Aが相続を放棄しなければ得たであろうAの持分に対し、Aの債権者Cが仮差し押さえをし、登記を備えた。この場合、Bは、当該不動産の所有権をCに対抗できない。 ×
「できない」→できる。
※相続の放棄には遡及効があるので、相続放棄をした者は始めから相続人ではなかったことになり、相続放棄者の持分を差し押さえた者は、無権利者の持分を差し押さえた者となる。よって、Bは、登記がなくともCに対して相続による所有権の取得を対抗することができる(判例)。
132-15)Aの所有する甲土地につきAがBに対して遺贈する旨の遺言をして死亡した後、Aの唯一の相続人Cの債権者DがCを代位してC名義の所有権取得登記を行い、甲土地を差し押さえた場合に、BはDに対して登記をしていなくても遺贈による所有権の取得を対抗できる。 ×
「対抗できる」→対抗できない。
※遺贈による物権変動も、登記の対抗要件を備えなければ第3者に対抗できない(判例)。したがってBは、Dに対して、登記をしていなければ遺贈による所有権の取得を対抗できない。
130-16)Aの所有する甲土地につきAがBに対して売却したが、同売買契約が解除され、その後に、甲土地がBからCに売却された場合に、Aは、Cに対して、Cの善意悪意を問わず、登記をしていなくては所有権の復帰を対抗することはできない。
Aは登記なくしてCに対抗することはできない。
※解除者と解除前の第3者は対抗関係に立つ(判例)。従って解除者Aは、解除後の第3者Cに対して、登記をしなくては所有権の復帰を対抗することはできない。
134-1)土地の所有者が自己所有地を他人に賃貸して土地を引き渡した場合、土地の占有権は賃貸人に移転するから、所有者は土地の占有権を失う。 ×
「失う」→失わない。
※土地の所有者は賃貸人の占有を通じて、代理占有する事が可能であり、占有権を失うわけではない(民法181条)。この場合、所有者・賃貸人の両者が占有権を有することになる。
134-2)占有権の譲渡は、占有物を現実に引き渡さなければ、その効力を生じない。 ×
「生じない」→生じないわけではない。
※占有権の譲渡方法には「現実の引渡」「簡易の引渡」のほか、「占有改定」や「指示による占有移転」のように実際に占有物を引き渡すことを必要としない方法も認められている。
134-3)代理人が占有物を本人のために占有する意思を表示したときは、これによって本人が占有権を取する。
※これを占有改定という。
※占有改定は実際に引き渡されてはいないにも係わらず、占有権の移転がなされる観念的な引き渡しの方法である(民法183条)。
134-4)Aが横浜のB倉庫に置いてある商品をCに売却し、B倉庫の経営会社に対して以後はCのために商品を保管するように通知した場合、B倉庫会社がこれを承諾したときに占有権はAからCに移転する。 ×
「B倉庫がこれを承諾」→Cがこれを承諾・・・
※高等裁判所「指示による占有移転」の場合に承諾をなすのは、相手側のCである。
136-5)Aがその所有する建物をCに賃貸していたところ、Cがその建物を自己の所有する建物としてBに売却した場合、Bが即時取得(民法192条)によりその所有権を取得できる可能性がある。 ×
「可能性がある」→可能性はない。
※即時取得(民法192条)の要件は・・・
(1)目的物が動産であること
(2)前主が無権利者であること
(3)前主に占有があること
(4)前主との間に有効な取引関係があること
(5)平穏・公然・善意・無過失で占有を取得することである。
本肢の場合、売買の目的物が不動産であり、(1)の要件を満たさないので不可能。
136-6)Aの所有する山林に生育する立木について、Bがその山林および立木を自己の所有するものであると誤信して、その立木を伐採した場合、Bが即時取得(民法192条)によりその所有権を取得できる可能性がある。 ×
「可能性がある」→ない。
※「立木」は原則として土地の定着物として不動産である(民法86条1項)から、即時取得の「(1)目的物が動産であること」の要件を充たさない。また伐採による取得は、取引関係による取得ではないので、即時取得の「(4)前主との間に有効な取引関係があること」の要件も充たさない。従って即時取得は不可能である
136-7)成年被後見人Aは、その所有するパソコンをBに売却したが、Bは、Aが成年被後見人である事実について善意・無過失であった場合、Bが即時取得(民法192条)によりその所有権を取得できる可能性がある。 ×
「可能性がある」→可能性はない。
※成年被後見人は無権利者ではなく「前主が無権利者である」要件を満たさない。また制限行為能力者であることを理由とした取消が可能な取引であるので、「前主との間で有効な取引関係がある」要件も満たさない。従って即時取得は不可能である。
136-8)Aの所有する自転車をCが借りた後に駅前駐輪場に停めていたところ、Bがその自転車を自己の自転車と誤信して、その自転車の使用を継続した場合、Bが即時取得(民法192条)によりその所有権を取得できる可能性がある。) ×
「可能性がある」→可能性はない。
※取引行為がないので、解答5の4の要件を満たさないので即時取得は不可能である。
138-9)AはBにAの所有の絵画を預けた。Bがこの絵画を自己のものだと偽ってCに売却した場合、Bにこの絵画の所有権がないことにつき善意・無過失のCが占有改定によってBから引き渡しを受けたときはCは、この絵画の所有権を取得することができる。 ×
「取得することができる」→取得することはできない。
※即時取得(善意取得)するためには、占有を取得する必要がある(民法192条)。そして即時取得成立のための占有の取得の方法として、「占有改定」の方法は認められていない。
138-10)だまされて任意に自己所有の動産を他人に引き渡した者は、占有回収の訴えを提起してその動産を取り戻すことができる。 ×
「できる」→できない。
※占有回収の訴えは、詐欺や損失によって占有を失った場合には、提起することはできず、盗難等の占有を奪われたときに提起することができる。
138-11)所有者が他の土地に囲まれて公道に通じない土地(袋地)である場合、その所有者は、公道に出るために、その土地を囲んでいる他の土地を通行する権利を有し、必要があるときは、自分の費用負担で地ならしをしたり、砂利を敷くなどして通路を開設することが認められる。
※民法210条、211条。
※改正前は「囲繞いじょう地通行権」と呼ばれていた権利。現在は「公道に至るための他の土地の通行権」となっている。この場合、通行する権利は認められるが、通行権者は原則として、通行する土地に生じた償金を支払わなければならない。民法212条。
138-12)Bの所有する動産がAの所有する不動産に従として符合した場合に、AとBは、AとBとの取り決めに関係なく、Aの不動産の価格とBの動産の価格の割合に応じてその合成物を共有する。 ×
※「取り決めに関係なく」→取り決めがなければ
※「共有する」→Aが所有権を取得する。
▲当事者間において特約がない場合、不動産に従として符合した物の所有権は原則として不動産の所有者(A)が取得する(民法242条)。なお民法242条は任意規定であり、特約がある場合は特約が優先する。
140-13)Aの所有する動産とBの所有する動産が符合して分離することが不可能になった場合において、両動産について主従の区別をすることができないときには、AとBは、当然に相等しい割合でその合成物を共有するものと見なす。 ×
「相等しい割合で」→価格の割合に応じて。
※符合した動産について主従の区別をすることができない場合には、各動産の所有者は、その符合の時における価格の割合に応じて合成物を共有することになる。民法244条。
140-14)BがAの所持する材料に工作を加えて椅子を完成させた場合に、その椅子の所有権はAとBとの取り決めに関係なく、Aに帰属する。 ×
「取り決めに関係なく」→取り決めがなければ。
※当事者間において特約がない場合、加工物の所有権は原則として材料の所有者「A」に帰属する(民法246条)。なお、民法246条は任意規定であり、特約がある場合にはその特約が優先する。
140-15)各共有者は、単独で共有物の保存行為をなすことができる。
※「保存行為」は、共有者各人が単独で可能。
※「保存行為」とは、共有物の修繕や不法占拠者に対する返還請求等を指す。民法252条但書。
140-16)各共有者は、他の共有者の同意なしに、自己の持分権を第3者に譲渡できない。 ×
※「譲渡できない」→譲渡可能。
※共有者が自己の持分を第3者に譲渡することは、他の共有者の同意を必要とせず、自由にできる。一方、共有物全体を譲渡する場合には、共有者全員の同意が必要である。民法251条。
142-1)留置権を行使していても、債権の消滅時効は進行する。
※民法300条。
※留置権を行使しても債権の消滅時効は中断しない。
142-2)留置権は、その目的物の所有者が債権者から第3者に移転した場合には、消滅する。 ×
※「消滅する」→消滅しない。
※留置権は物権であり、対世的効力があるので、留置権所有権を譲り受けた第3者に対しても主張することはできる。
142-3)質権は、質権設定者がその目的物を引き渡さなくてもその効力は生ずる。 ×
※「引き渡さなくても」→引き渡してはじめて。
※質権設定契約は、要物契約であり、質物を質権者に引き渡さなければ効力を生じない。民法344条。なお、この「引渡し」には「占有改定」は含まれない。
※要物契約→要物契約とは、単に契約当事者の意思表示の合致だけではなく、当事者による物の引渡しやその他の給付行為があったときにはじめて効力が生ずる契約のことです。民法が型を定めている契約(典型契約)では、消費貸借、使用貸借、寄託などが要物契約です。たとえば、消費貸借は、当事者の一方が種類、品等および数量の同じものを返還することを約束した上で、金銭その他のものを相手方から受け取ることによってその効力を生ずるとされる典型的な要物契約です。なお、要物契約に対し、売買契約などのように契約当事者の意思表示の合致だけで成立する契約のことを諾成契約といいます。
142-4)動産の質権者が占有を奪われた場合、占有回収の訴えによって、質物を取り戻すことができるほかは、質権に基づく物権的請求権によっても質権を取り戻すことができる。 ×
※「物権的請求権によっても質物を取り戻すことができる」
→物権的請求権によっては質物を取り戻すことができない。
※動産質権者は、質権の占有を奪われたときは、占有回収の訴えによってのみ、その質物を回復することができる。
142-5)Aは、Bから建物を賃借し、その建物内に動産を備え付けている。Aがその所有物である本件不動産をDに売って引き渡した場合に、本件動産について、Bは、先取特権を行使することはできない。
※民法333条
※先取特権は、債務者がその目的である動産を第3取得者に引き渡した後は、その動産について行使することができなくなる。
144-6)Aは、Bから建物を賃借し、その建物内に動産を備え付けている。Aがその所有物である本件動産をDに売った場合、Aの取得する売買代金について、BはDの支払い前に差し押さえすれば、先取特権を行使することができる。
※先取特権には物上代位性がある。
※ただし先取特権者はその払渡し、引き渡し前に差し押さえなければならない(民法304条1項)。
144-7)将来発生する債権のために、現在において抵当権を設定することはできないとするのが判例の立場である。 ×
※「できない」→できる。
※判例は、付従性を緩和して将来発生する債権を被担保債権とする抵当権の設定を認めている。
144-8)同一の不動産に複数の抵当権を設定することはできない。 ×
※「できない」→できる。
※抵当権は順位を付けて同一の不動産に複数設定することが可能である(民法373条1項)。なお、順位は登記の前後による。
144-9)抵当権の順位は、各抵当権者の合意だけで変更することができ、利害関係人の承諾を要しない。 ×
※「要しない」→要する。
※抵当権の順位の変更については、各抵当権者の同意によって変更することができるが、利害関係を有するものがいる場合には、その者の承諾が必要である(民法374条1項)。
144-10)抵当権は、1つの債権に一つしか設定できない。 ×
※「設定できない」→設定できる。
※1つの債権を担保とするために複数の不動産に抵当権を設定することも可能。これを共同抵当という(民法392条)。
146-11)抵当権の効力は、設定行為に別段の定めが無い限り、抵当不動産の付加一体物には及ばない。 ×
※「及ばない」→及ぶ。
※「抵当権は、抵当地の上に存する建物を除き、その目的である不動産に対して付加して一体となっている物に及ぶ」(民法370条本文)ので、原則として、抵当権の効力は付加一体物に及ぶ。
146-12)抵当権の効力は、原則として抵当権の設定された土地の上の建物にも及ぶ。 ×
※「建物にも及ぶ」→建物には及ばない。
※土地と建物は別個の権利の対象とされており、土地に設定された抵当権の効力は、建物に及ぶものではない。(民法370条本文)。
146-13)抵当権の効力は、原則として抵当権の設定当時の従物にも及ぶ。
※従物が民法370条の付加一体物に含まれるかについては争いがあり、判例上も明確ではないが、抵当権設定当時の従物には、抵当権の効力が及ぶとするのが判例である。
146-14)借地上の建物について抵当権を設定した場合、抵当権の効力は当賃借権には及ばない。 ×
※「及ばない」→及ぶ。
※借地上の建物について抵当権を設定した場合、賃借権に対しては、柔たる権利として抵当権の効力が及ぶとされている(判例)。
146-15)不動産に抵当権を設定した場合、抵当権の効力は、常にその不動産から生ずる果実にも及ぶ。 ×
※「常に」→その担保する債権について不履行があったときは・・・
※「抵当権は、その担保する債権について不履行があったときは、その後に生じた抵当不動産の果実に及ぶ」(民法371条)。よって抵当権の効力が果実に及ぶのは、被担保債権の不履行があったとき以降である。民法371条は平成15年に改正された条文。
148-16)抵当権者は、その抵当権を他の債権の担保とすることができる。
※民法376条1項。
※これを「転抵当」という。たとえば抵当権者が、他の者からお金を借りるときに、抵当権をその担保とするような場合である。
148-17)抵当権は、債務者及び抵当権設定者に対する関係では、その抵当権によって担保されている債権と同時でなければ、時効により消滅することはない。
※民法396条。
※抵当権も、「所有権以外の財産」として、消滅時効の対象となりうるが(民法167条2項)、債務者・抵当権設定者に対する関係では、抵当権のみが独自に時効消滅することがないこととした。一方で、第3取得者や高順位抵当権者との関係では、20年で時効によって消滅すると解されている。
148-18)Aは、Bに対する債務を担保するため、BのためにA所有の甲土地に抵当権を設定し、この抵当権が実行されてCが甲地を買い受けた。Bのために1番抵当権設定当時甲地は更地であったが、Fのために2番抵当権が設定される前に甲地に建物が建てられた場合、Fの申し立てに基づいて土地抵当権が実行されたときは、この建物のために法定地上権が成立する。 ×
※「成立する」→成立しない。
※二番抵当権を基準にすると法定地上権成立の要件である「
抵当権設定当時すでに建物が存在していること」を充たすように見える。しかし、この場合、1番抵当権の基準にするので、その要件を充たしておらず、たとえ2番抵当権者の申立によって抵当権が実行されたとしても、法定地上権は成立しない。よって、1番抵当権設定当時、土地上に建物が存在しない場合、(つまり更地に抵当権が設定された場合)、法定地上権は成立しない(判例)。
150-19)Aは、Bに対する債務を担保するため、BのためにA所有の甲地に抵当権を設定し、この抵当権が実行されてCが甲地を買い受けた。抵当権設定当時甲地にE所有の建物が建っていたが、抵当権設定後、この建物をAが買い受け、抵当権実行後この建物はAの所有となっていた場合、この建物のために法定地上権は成立しない。
※抵当権設定当時は、土地と建物の所有者が異なり、法定地上権成立の要件を充たさないので、法定地上権は成立しない(判例)。またこの場合、Aが土地と建物の所有権を取得した後も抵当権者がいる以上賃借権は混同の例外として存続するとされている。よって、Cの買い受け後においても、Aは、土地賃借権つき建物を所有する事ができることになる。
150-20)抵当権設定後に抵当地に建物が築造された場合に、その建物が抵当権設定者以外の者によって築造されたときは、土地の抵当権者は抵当地と共に一括してその建物を競売することはできない。 ×
※「できない」→できる。
※一括競売は、建物が抵当権設定者以外の者によって築造された場合でも可能である(民法389条1項)。
150-21)抵当不動産について所有権を取得した第3者は、抵当権者に対して抵当権消滅請求をすることができるが、抵当権者は、これに対し、抵当権消滅請求を受けた2ヶ月以内に、通常と同様の手続で競売の申立をすることができる。
※抵当権消滅請求の制度(民法379-386条)である。
※第3取得者は、抵当権消滅請求をすることが可能。たたし、主たる債務者・保証人及びこれらの継承人は、たとえ第3取得者になったとしても抵当権消滅請求はできないので注意(民法380条)。
150-22)抵当権者に対抗することができない抵当建物の占有者が、競売手続の開始前よりその建物を使用または収益をなしているときは建物の占有者は、建物の競売による買い受けの時から6ヶ月間は、買い受け人に対して建物を引き渡すことを要しない。
※民法395条。
※以前は抵当権者に対抗することができない賃貸借であっても短期賃貸借(民法602条)の期間内は抵当権者・買い受け人に対抗できる制度があったが、濫用されることが多かったので、平成15年改正により、抵当権者・買い受け人には対抗できないが、6ヶ月間明け渡し猶予する制度が設けられた。
152-23)登記された賃貸借は、その登記前に抵当権の登記をしている抵当権者のすべてが、その賃貸借に対抗力を与えることに同意し、かつ、その同意の登記があるときは、その同意をした抵当権者に対抗することができる。
※民法387条1項。
※抵当権に劣後する賃貸借であっても、抵当権者の同意を得たもので、かつその旨の登記があるものは、抵当権に対抗力が与えられる。
152-24)根抵当権の設定に当たっては、元本の確定期日を定めることを要し、この定めのない根抵当権の設定は、他の債務者を害する恐れがあるので無効である。 ×
※「無効である」→無効ではない。
※元本の確定期日を定めないことも可能(民法398条の6、第1項)。
152-25)根抵当権は、元本が確定した時に存在する被担保債権の元本についてのみ、極度額を限度として、優先弁済を受けることができる。 ×
※「元本についてのみ」→元本の他、利息・遅延損害金について
※元本の他、利息・遅延損害金について優先弁済を受けられる(民法398条の3、第1項)。

※極度額とは、根抵当権者が根抵当権に基づいて優先弁済を受ける最大限度額をいい、根抵当権者は、元本、利息及び損害金を含めて極度額の範囲内で優先弁済を受けることできる。
根抵当権は、一定の範囲に属する不特定の債権を、極度額の限度において担保する抵当権をいい(民法398条の2)、通常極度額は債権者と債務者間の取引上の限度額を考慮して定められる。
152-26)元本の確定前においては、根抵当権の被担保債権の範囲を変更することができるが、この場合、高順位の根抵当権者の承諾は不要である。
※民法398条の4
※根抵当権は、極度額を限度に優先弁済を受けられるもので、被担保債権の範囲の変更については、後順位抵当権者の承諾は不要。一方、極度額の変更には、利害関係人の承諾が必要である(同法398条の5)。
154-27)元本の確定前においては、根抵当権者は、根抵当権設定者の承諾を得なくても、その根抵当権を譲渡することができる。 ×
※「承諾を得なくても」→承諾を得て。
※根抵当権者は、根抵当権設定者の承諾を得て、その根抵当権を譲渡することができる。民法398条の12、第1項)。
156-1)債権者が特定物に関する債権を保全するため債権者代位権を行使するには、債務者が無資力であることが必要である。 ×
※「必要である」→必要なし。
※債権者代位権を行使するためには、、原則として、債務者が無資力であることが必要であるが、特定債権を保全するために代位権を行使するためには、債務者が無資力であることは不要(判例)。
156-2)債務者が既に自ら権利を行使している場合でも、その行使の方法又は結果の良否によっては、債権者は、債権者代位権を行使することができる。 ×
※「できる」→できない。
※債務者が自ら権利を行使している以上、債権者は、その行使方法又は結果の良否にかかわらず脚権者代位権を行使することはできない。
156-3)債権者が債権の履行期以前に債権者代位権を行使するには、保存行為の場合を除き、裁判上の代位によらなければならない。
※民法432条2項。
※債権者代位権の行使は、原則として、債権が履行期(弁済期)にあることが必要である。例外として、保存行為または裁判上の代位については、債権の履行期(弁済期)前であっても行使可能。
156-4)不動産がA→B→Cと順次売却された場合において、それらの所有権移転登記が未了の間に、Dが原因証書等を偽造して、同一不動産につきA→Dの所有権移転登記をしてしまったときは、Cは、Bの債権者として、BがAに代位してDに行使することができる所有移転登記の抹消請求権を代位行使することができる。
※Cは、BがAに代位してDに行使することができる所有権移転登記の抹消請求権を代位行使することができる。
※登記請求権等の特定債権保全のために債権者代位権を行使すること(債権者代位権の転用)も可能であり、また、債権者代位権自体も代位行使の対象となる(判例)。なお、債権者代位権の転用の場合には、債権者の無資力は要件は不要である(判例)。
158-5)遺留分減殺請求権は、権利行使の確定的意思を有することを外部に表明したと認められる特段の事情がある場合を除き、債権者代位権の目的とすることができない。
※遺留分減殺請求権は差遣車台違憲の対象とはならない。
※遺留分減殺請求権は一身に専属する権利であり、原則として債権者代位権の対象とはならない(判例)。
158-6)債権者Aは、Bに対する金銭債権を保全するためにBのCに対する動産の引渡請求権を代理行使するにあたり、Cに対して、その動産をBに引き渡すことを請求することはできるが、直接自己に引き渡すことを請求することはできない。 ×
※「できない」→できる。
※債権者が代理行使する債権が金銭債権、動産の引渡請求権のような場合には、債権者代位権を行使する債権者は、直接自己に引き渡すよう請求することができる(判例)。
158-7)債権者は債務者の財産から満足を得られない場合には、債権取得前に債務者が行った贈与契約を詐欺行為として取り消して財産を取り戻すことができる。 ×
※「債権取得前に」→債権取得後に
※取消権を行使する債権者の債権は、贈与行為の前に成立していなければならない。債権者が債権を取得する前になされた行為は、当該債権者を害する行為(詐欺行為)とはならないからである(民法424条1項本文)。
158-8)債務者の財産状態が離婚に伴う相当な財産分与により悪化し、債権者の満足が得られなくなった場合には、債権者は財産分与を詐害行為として取り戻すことができる。 ×
※「できる」→できない。
※身分行為は詐害行為取消権の対象にならないので、離婚に伴う財産分与が相当な場合には、取り消すことができない(民法424条2項)。しかし、離婚に伴う財産分与が不相当に課題であり、財産分与に仮託してなされた財産処分であると認められるような特段の事情がある場合には、例外的に、詐害行為として取消の対象となる。
160-9)財産権を目的としない法律行為は、原則として詐害行為取消権(債権者取消権)の行為の対象とはならないが、相続の放棄は、例外として詐害行為取消権(債権者取消権)の行為の対象となる、 ×
※「相続放棄は・・・、対象となる」→対象とならない。
※相続の放棄も身分行為であり、詐害行為取消権の対象とはならない。
160-10)特定物の引渡を目的とする債権を有する者も、目的物の処分により債権者が無資力となった場合には、詐害行為取消権(債権者取得権)を行使し得る。
※特定物の引渡しのような特定債権の保全のために詐害行為取消権は行使できないのが原則である。しかし特定債権であってもその債務の不履行により損害賠償債権に転化しうるものは、損害賠償債権保全のために詐害行為取消権を行使できる(判例)。
160-11)不動産が二重に譲渡されたため、第一の買い主が不動産の引渡を受けることができなくなった場合には、第一の買い主は、債務者と第二の買い主との間で行われた売買契約を詐欺行為として取り消すことができる。 ×
※「できる」→当然にできるわけではない。
※本肢は、(問題4)の「特定債権保全のための詐害行為取消権行使」の具体例であるが、詐害行為取消権を行使するためには、債務者の無資力要件や、債務者及び受益者の悪意の要件を充たす必要があり(民法424条1項但書)、本肢の事情だけでは、売買契約を詐欺行為として取り消すことはできるわけではない。
160-12)債務者が一部の債権者に債務の本旨に従った弁済をなすことは、原則として詐欺行為とならないとするのが判例の立場である。
※債務の本旨に従った弁済をなすことは、原則として詐欺行為とはならない。しかし、特定の債務者と通牒して、他の債務者を害する意思で弁済をした場合には、詐欺行為となる。
162-13)詐害行為取消権(債権者取消権)は、裁判上行使し得るだけでなく、裁判外でも行使し得る。 ×
※「裁判外でも行使し得る」→裁判外では行使できない。
※詐害行為取消権(債権者取消権)は、裁判上でのみ行使し得る。
※一方、債権者代位権は、裁判上でも裁判外でも行使可能。
162-14)債権者が第三者に金銭を贈与したことにより、自己の債権の満足が得られなくなっただけでなく、他の債権者の債権も害されるようになった場合には、取消債権者は自己の債権額を超えていても贈与された金銭の全部につき、詐害行為として取り消すことができる。 ×
※「自己の債権額を超えて・・・」→自己の債権額の範囲内で。
※詐害行為取消権が行使可能なのは、あくまでも詐害行為取消権を行使する債権者の損害の範囲内に限られる。
162-15)債権者は自己の債権について、詐害行為として取消、受益者から取り戻した財産から他の債権者に優先して弁済を受けることができる。 ×
※「できる」→できない
※詐害行為取消権による取消は、すべての債権者の利益のためにその効力を生ずるとされており(民法425条)、詐害行為取消権を行使した債権者に優先弁済権があるわけではない。ただし、相殺が可能な場合には、相殺することで事実上優先弁済を受けたのと同様の効果を生じうる。
162-16)詐害行為取消権による取消の効果は、訴訟当事者である債権者及び受益者又は転得者だけではなく、訴訟に関与しない債務者についても及ぶ ×
※ 「・・・にも及ぶ」→及ばない。
 ※詐害詐害行為取消権による取消の効果は、相対的なものであって、取消権を行使した債権者とその相手方(受益者または転得者)の間でのみ取消の効果を生ずる(判例)。よって訴訟に関与しない債務者については、取消の効果は及ばない
164-17)詐害行為取消権(債権者取消権)は、取消の対象となる法律行為があったときから2年間行使しないときは、時効により消滅する ×
 ※「2年間」→20年間。
 ※詐害行為取消権は、債権者が取消の原因を知った時から2年間、行為の時から20年間行使しないときは、時効によって消滅する(民法426条)。
inserted by FC2 system